知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

ルールに沿って動けるシステムを作る

アナログの時代の準備と整理

その昔は、自分でも用意周到な方だったと記憶している。その場になってからアドリブでなんとかする、というのが苦手で、取り返しがつかない事態になることに対する恐怖から、相当早くから準備しないと落ち着かなかった。

書類が仕事の中心だった頃は、紙を紛失すれば終わりなわけだから、きっちり分類し、インデックスをつけて整理し、保管していた。職場の書類も、自分の机も、自宅の書類もそのようにしていた。それなりにそこに時間はかかっていたわけだけれど、当時はここまで世の中のスピードが速くなかったし、取り扱う書類の量もそこまでではなかったのでなんとかなっていた、ということもあるのだろう。

事前準備しなくても差し支えない?

おそらく、Googleが登場し、Gmailが万人に利用できるようになってから、周到に準備しなくても、必要になってから検索すればなんとかなってしまうというのが徐々に浸透し、常態になり、携帯電話やスマートフォンがこれに拍車をかけた。自分自身の経験値が上がり、引き出しも増えてその場で考えてもしのげることが増えてきたこともある。事前に準備するのと同等の結果がその場で得られるのであれば、特に事前準備する必要などないではないか?

というように明確に決意したわけではないが、いつのまにか事前準備というのは、軽く検索しておくとか、大体のあたりをつけて一応の安心感を得ておく、という程度にとどまるようになり、ぶっつけ本番の割合も増えて行った。取り扱う仕事や家事の量が増えて同じように処理することができなくなってしまった、という状況の変化もあったと思う。

事前準備しなければ行き当たりばったりになる

こういうものは全般に伝染するらしく、資料の整理や予定行動の用意だけでなく、仕事全般・私生活全般が「事前に考えて整える」ことをしなくなり、徐々に「行き当たりばったり」が増えて行った。「エントロピーは増大する」のである。

ここから抜け出すのは容易ではない。行き当たったときにその場で判断をする、ということは、十分に時間をかけて検討することができないだけでなく、事前のときよりも選択肢が限られる、ということを意味するので、その場その場の判断の積み重ねがほとんど何も生み出さない。同じようなことについてその都度答えが違っていたり、後から振り返ると『なんでこんなことをしたのだろう』と思うような行動をとっていたりすることも頻繁にあったが、そのフィードバックがかかることはなく(忘れてしまうことが多いし、思い出したときには既に選択肢の中に入れられない状況のことが多い)、同じような失敗を繰り返す頻度が増えていた。

こんな状況になっていることに無自覚なわけでもなかったのだが、改めようと思うと全体のシステムを見直して、かつ、今後だけではなくてその時点のストックの状況を変えないといけないので、ほとんど諦めていた。(こうして書いてみると、なんて生産性が低いんだ>自分)

『考える』ことと『実行する』ことを分ける

で、本題(前置き長いし)。

スピードハック研究会では、『考える』ことと『実行する』ことを分けることが推奨される(例えば、シゴタノ!のこの記事を参照)。以前のエントリで書いた、朝の動線を予め考えてレシピ(手順書)にし、それに沿って動く、というのもこの1つ。

いつもの行動を増やす

他にも、宿泊出張で帰りの新幹線が取れなくてorzという話の後、事前に行動計画を立てておいて、それを記録しておこうとしたところ、出張はパターンをいくつか決めておき、それに沿って予約をするようにしたら楽ですよ、というアドバイスを頂いた。固定できるところは固定してしまうと、『いつもの行動』が増えるので、「あれ、今日はどっちだっけ?何分だっけ?」などと考えたり確認したりする必要がなくなる。

確認行為はリソースを喰う

実は心配性なところはあまり昔と変わっていないので、こういう確認行為が地味に多くてけっこうリソースを消費しているし、予約の時にも「何時に出よう」から考え出すと判断の選択肢が多くて迷うため、そこでもリソースが消費されている。そこで、毎回のパターンをせいぜい2つくらいに絞って最適・次善と思われる行動計画セットに作り込んでおけば、実行フェーズでは何も考えなくて済むのでとても楽になる、という案配。

「リソースを消費している」と書いたけれど、あまりにもこういう行動が多かったため、それが通常になってしまっていて、パターンを固定して実行するということを2〜3回やってみて、いままでいかに無駄にリソースを消費(というか浪費だね)していたかに気がついた、という話である。

事前に考えれば練ることができる

最適な行動を作るために、何時の新幹線が良いだろうか、そのためには最寄り駅の電車が何時で、家を何時に出て、さらにその日の朝の行動はどうなって、と考える。シミュレーションを繰り返して考えたため、そこには結構な時間がかかったけれど、その場の思いつきでなくちゃんと考えただけあって、それなりに練られたものになっていて、当初からわりあい快適に過ごすことが出来、実行しての気づきを入れてさらにチューンしたりしている。

気づきを拾い上げる仕組み

こうした事前の準備レシピとその使い回し、というのは典型的だけれど、そのほかにも、「あ、これ、ちゃんと考えておきたいな」と思うことはしばしばあり、これまでは、そういった思いつきを拾い上げる仕組みがなかったので、そのまま放置され忘れ去られていたのだけれど(たまに運良く覚えていたものがブログのネタになっていたりしたくらい)、今は、TaskChuteのコメント欄に書いたり、プロジェクト・ノートに書いたり、日記(これもSH研の課題なので毎日テンプレートに沿って書いている)に書いたりして、これらはほぼEvernoteに集約される(会社のプロジェクト・ノートを除く)。

このため、毎朝EvernoteのInBoxを空にするときに、「時間を取って考えたいこと」は、タイトルに「考える」とつけて、別のノートを作り、「考えていること」というノートブックに入れるようにしている。そして、考えた結果物は、「レシピ」や「チェックリスト」、または「ルール」といった「参照資料」スタックのノートブックに入っていく。

ここも循環で、思いついて拾い上げる仕組みがあると分かっていれば、メモを取るようになり、さらに、TaskChuteから離れている時になにか「考えたいこと」を思いついたときには、直接Evernoteにメモを投げる、という行動が取れるようになる。これも、カオスだったEvernoteをなんとか整理して、Activeというスタックを作り、そこに「考えていること」や「作業中」や「調べる・読むこと」のノートブックを作って巡回するようにした頃から回り出した。

当初からこの3つのノートブックを作っていたわけではなくて、巡回しているうちに、その場で全部が考えられないので、pendingのノートを入れる置き場所が欲しくなり、Activeノートブックを作って放り込んでいたところ、雑然としてきたので、今は上記の三種にひとまず分けて入れてみている。

考える仕組み

初めのうちは、InBoxを空にするついでにActiveスタックのノートブック内のノートを巡回して、考えて完成し、「参照資料」側に移していたのだけれど、最近考えたいことがどんどん増えてきて、処理しきれなくなっている感がある。そして、処理し切れていないものだから、同じことを思いついて別のノートに同じ趣旨のことが書かれていてEvernoteに「関連するノート」とか指摘されて「あれ?」となったり。そろそろ、朝のレビュータイムの中には収まり切らなくなっているので、別に時間を取る必要がありそうだ。

こうして「考えて作った」参照資料は、レシピやチェックリストは必要な都度使うし、自分で決めたルールは、時々ノートブックを読み返して思い出すようにしている。これも、プロジェクト・ノートと同じで、どうしてそのルールを作ったのか、という理由や思いをきっちり書くようにしているので、読み返すと「ああそうだった」となってルールに沿った行動が取りやすくなる効果がある。そして、時間をおいて読み返すと、「これはちょっと違うかも」ということも出てきたりして、そうすると、日付を入れて修正してみたりもする。

まだ作り始めてからそれほど時間が経っていないので、あまりできていないのだけれど、レシピなんかも作ったまま放置していては使えなくなってくる(実情に合わないところが増えて見なくなってしまう)ので、これも実施するときのフィードバックだけじゃなくて、改めて読み返してじっくり考えることもやっていきたい。うーん、色々時間がかかるなぁ。

というわけで、なんだか最近とても「ものを考えるようになった」と実感しているのだった。