知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

夫婦別姓導入?記事に思う

 政府は、夫婦が別々の姓を名乗ることを認める選択的夫婦別姓を導入する方針を固めた。

 早ければ来年の通常国会に、夫婦同姓を定めている民法の改正案を提出する方向で調整を進める。現行の夫婦同姓は1947年に民法に明記され、約60年ぶりの大幅改正となる。

今日の読売新聞1面記事だったらしい。Onlineでは、「夫婦別姓導入へ…政府、来年にも民法改正案」となっている。
Yahooにはトピックスがあり、関連情報にもリンクが貼られている。

まあ確かに民主党はこれまで野党として社民党や共産党と11回も別姓法案を共同提出してきたわけで、社民党の福島党首は別姓実践者でその関連著書もあるくらいなのでいま実現しなければ永遠に実現しないだろうというタイミングではある。

楽しくやろう夫婦別姓―これからの結婚必携

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しかし、読売の解説にもあったように、政府案で提出となると実現性が格段に違うので、これから保守派が反撃に出ることは十分予想されるわけで、あんまりすんなりこのまま来年の通常国会にかかるとは信じられないのが正直なところ。どうもいままで法務省案まで出たのに成立せず、これはもうこの国では永遠に法制化されないだろうと変に達観?してしまったので、政権が替わったといってもにわかに信じがたいのだ。

かくいう私も別姓実践者で、結婚当時は結婚手当とかがバカにできなくて婚姻届を出し、通称使用で結婚生活を始めた。このときには上記の福島・福沢本には大変お世話になった。できる限り戸籍姓に生活が浸食されないように最大限の努力を払ったものである。当時は周りにあまり実践者がいなくて、悪気のないひとに戸籍姓で呼ばれたり、無邪気に『なんでそんなことしてるの?』と聞かれてこちらも肩に力が入って理由を力説したものだった。

数年してどうしても戸籍名で証明書が必要になり、色々手段を模索したがどうにも尽きてペーパー離婚した。その後いつでも必要になったらペーパー再婚もできるように婚姻届も用意したのだが、結局必要が生じなくてそのまま事実婚で現在に至っている。一度通称使用の不自由さを体験してから事実婚に移行するとダブルネームでない快適さが実感され、よほどの理由がない限り戻りたくはない。それにしても、結婚当時、夫と別姓について話し合ったときには、数年のうちには法制化されるだろうと予想していたのだが、そろそろ20年である。まったく、達観もしようというものだ。

夫についてカナダに数年滞在したときには、ビザの取得に婚姻状態の証明としてきっと戸籍が必要になるだろうと予想していたのだが(そして、そのときには通称使用に戻る覚悟だったのだが。私はその間無職だし)、予想に反して戸籍は必要でなく、パスポートの姓が違っていても、何ら問題なく妻としてビザが下りた。行ってみたら滞在先のケベック州はなんと夫婦別姓が基本であり、周りはみんな別姓で、子どもの姓は母・父・母と父の結合姓の選択が可能だった。こんな環境だったので、何の問題もなくクレジットカードの家族カードも作れたし、銀行口座も共同名義で持っていた。

日本に戻り、職業人生に復帰してからは、税金の優遇もないし、持ち家もないのでローンや持分の心配もない。生命保険の受取人にはなれないが、まあこれは子どもに行けば問題なかろう。あいかわらずクレジットカードの家族カードは作れないし、郵便物の受け取りに互いが代理人として行くのは難しい(自宅で受け取れば問題ないのだが)。ある程度の不便はあるが、日常的に困ることはほとんどない。

何よりも、20年近く経過して、別姓実践者が格段に増えたため、周りから奇異の目で見られることがぐっと減り、説明をくどくどしなくても『うちは別姓なんで』の一言で済ませることができるようになった。まあほとんどのケースは通称使用なんだろうけれど、弁理士会も今は公式に通称使用を認めているし、会社も認めているところが大幅に増えたと思う(余談だが、通称使用を会社が認める場合、税金は戸籍名になるので、それを会社で通称と結びつけるという作業が発生し、人事なり経理なり総務なりで事務の手間はまちがいなくかかる。)

さて、上記の記事によれば、従来からの民主党案では子どもの姓は子の出生時に決めるが、法務省が昔作成していた案では複数の子の姓は統一するとなっていて、調整が必要らしい。今日、昼食を食べながらこの話をしていたら、息子たちが、

 兄弟が同じ名字じゃないといけないってなったら俺ら困っちゃうよな!

と言っていた。

そう、我が家は夫婦別姓のみならず、子も兄弟別姓を実践している。息子1号は私の姓、息子2号は夫の姓。ペーパー再離婚はしておらず、2号出生時に家庭裁判所に2号の氏の変更を申し立てて夫の戸籍に2号を移している。ちなみに、親権は同時には移らない。移そうにも、そういう申し立てをする項目がないのだ。離婚の際にしか親権は登場しないようである。

で、上記の息子たちの発言でわかるように、生まれたときから自分の名字だと言われて使っている姓に愛着が湧くのはごく自然で、成人の時に本人に選ばせればよいと言うのは選択肢としてはあってよいと思うが、通常は出生時に与えられた姓になってしまうだろうと思う。

ちなみに、子どもたちのこの問題への感覚は、

 兄弟で名字が違うってわかると、絶対『なんで?』って聞かれるんだよ。で、そのときは、『うち、親が夫婦別姓だから』って答えるわけ。そうすると、また『なんで?』って聞かれるけど、そのときは、『知らん』って言ってる。だって知らんもん。

だそうだ。

 だいたい、なんで結婚すると同じ名字にしなきゃいけないわけ?変じゃんねぇ。

とのことで、正常な感覚に育ってくれて嬉しいです、はい。