知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

事務所仕事と会社仕事

転職してから3ヶ月がたった。昨日出向いた東京支社で、法務の部長に「入ってからどれくらいたったっけ?」と聞かれたので「3ヶ月です」と答えたら、「あれ、まだ3ヶ月なんだ。半年くらい経ってるような気がしてたよ」と言われた。どういう意味でしょうか、T部長。態度がでかいということだろうか。ううむ。

昨日は東京支社で打合せやらなにやら、その後弁理士会で委員会、さらにその懇親会、これを途中で切り上げて知財人の定例飲み会?に参加、という充実した一日だった。最後の飲み会で、「どうですか、会社の中の仕事は?事務所と比べて」と聞かれたのだが、お答えする前に人の出入りがあったりして答えそびれてしまったので、ここに書いておこうと思う。

私が何を思って転職したかは、以前のブログに書いた。一言で言えば、明細書をひたすら書くだけではなくて、事業の支援をすることがやりたかった。当事者になりたかったということだ。

さて、特許事務所にいたころは、まあ8割がた日本用の特許明細書を書いていたと思う。残りは多少の外国出願と、事務所の管理仕事と後進の指導というところ。ほんの少しだけ契約実務もあった。

一方、入社してみて、現在私がやっていることは、
(1)実務系
 ・新製品開発に伴う特許調査、発明発掘、アイデア提案の処理(先行調査と出願可否判断)
 ・特許事務所への指示と明細書のチェック
 ・外国出願の指示とチェック
 ・中間処理
(2)管理系
 ・環境の整備
   規程の改訂とか、管理DBの導入とか、業務フローの整理とか、ブランド管理とか、グループ管理とか
 ・意匠・商標の出願、調査のチェック(担当は別にいるので)
(3)係争系
 全案件の内容と進捗の把握。担当者からの相談に乗る。今までの経緯もあるので、担当を引き継ぐのは無駄が多いということで、主担当にはなっていない。その場その場で関係の特許は検討するし、提案も見るけど。正直なところ、技術検討をするのは厳しいし。今のところ交渉の場に出たりすることもない。

 重さとしては、(2)が中心で、発生のつど(1)と(3)をこなすってところ。なにしろ体制がさっぱり整っていないので、(2)でやるべきことがやたら多いのだ・・。このあたりは殊に企業での仕事と言えましょうか。定型的な仕事が半分以下に減ったので、たいそうおもしろい。会社しごと満喫という日々である。

 知財の仕事という意味では、本質的なところはどこでやるにしても変わらないと思うのだが(創造・保護・活用)、その主体がどんな会社でどんな事業でかによってカスタマイズの幅が広いと思う。まだ会社特有の事情について、事業についての情報が全然足らないので、効果を挙げるのが難しいのだが、幸いにして上司がこのあたりに通じた人なので助かっている。あとは時間をかけていけば何とかなっていくだろう。

 会社に移ってどんな仕事をしているんですか?とちょくちょく聞かれるが、上記のとおりなので、なんというか「知財業務全般」と言うしかない実態である。契約実務を中心にしているのではないかと問われることも多いのだが(そして確かに契約がなかなかできないのが事務所から企業に移った理由のひとつでもあるのだが)、現在の会社ではそれは法務マターなので、手をつけていない。法務に移れば喜んで山のようにやらせてもらえるだろうが、こう知財でやることてんこ盛りではしばらくはそちらに色目を使うのは無理そうである。

 という感じで、予想通り仕事の幅が非常に広がって、楽しんでいる。