知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

社内文書の書き方

今の時代、仕事にはメールが大幅に活用されているわけだが、社内報告とか稟議とかの正式な社内文書ってどうなっているのだろうか。会社によってはデジタルワークフローとかネットワークで稟議とかもされているのだろうけれど、少なくとも勤務先会社の場合、依然として正式な文書は紙ベースに印鑑である。

にもかかわらず、手軽なせいなのかなんなのか、報告事項をメールで済ませる人が後を絶たない。これだとうるさい上司の承認印ももらわずに、適当に関係ありそうな人を宛先に全員入れて

メールで送りました

とアリバイ作りができるので便利ということか?そして職位が上になるほどメールの量は莫大になって誰もみちゃいない、という状態になる訳ね。

メールで発信すると、上司がチェックして赤入れしないケースが紙の場合に比べてどっと増えるような気がする。そんなことをしていたらスピードは落ちるし、手軽さも落ちる。結果、若手が社内報告文書の書き方を訓練される局面が減って、つっこみどころ満載の文章が蔓延することになってるような気がしないでもない。これはしかし時代のせいなのか、当社のレベルが低いだけなのかはさっぱりわからない。

ともあれ、知財部としては、あまりいい加減な発信をするわけにもいかないので、頑なに紙ベースで文書を発行している。そうすると、部長承認で出すことになり、この部長がまたこの手のことにうるさい人なので、ちゃんと承認を取って出そうと思うとだめ出しがいっぱいということになるのだ。若手の訓練にはいいのだが、この手の訓練って、残念ながらある程度年齢がいくとかなり鍛えるのが厳しくなってくるように思う。若いうちに打たれておかないと、あとから盛り返すのは難しい。

さて、このようなビジネス文書(社内向き)では、少なくともこんな注意をすべし、と思っている。

・A4一枚に収まるような分量で書く。
 メールだと、スクロールしなくても読める量、とか、添付ファイルを開かなくても本文で、とか。
・最初の一段落を『リード』とし、その中に一通りの情報をすべて盛り込む。
 この段落は、何をして欲しいのかのアクションで締める。
 - 読み手は忙しいので、最後まで読んでもらえないと考えた方がよい
 - 詳細は以下の通り、として以下は箇条書きにまとめてしまう
・想定して書く
 - 相手はどんな立場か。その立場からするとどのように読むのか。
 - どんな質問が出てくると考えられるか。
 - こちらは相手にどんな行動を期待するのか。
・質問を予想して予め回答しておく
・その一枚以外へのジャンプを相手に強要しない。
 その中で完結すること。前に出した文書が関連事項について触れているとしても、再掲する。
・読むときに行きつ戻りつをさせない。
 どこかで矛盾した印象を与えると、読んだ文章を再読させることになる。

と、あらかじめ言い渡して作成させるのだけど、なかなかすっきりしたものは出てこない。真っ赤に添削して、まあこんなものか、と部長に持っていくと、もういちどダメだしくらったりする。

もっとも陥りがちなのは、知財法務系の報告って、正確に書こうとしがちで、すると読み手にはくどくて何が言いたいかわからない、となること。嘘は書いちゃ行けないけれど、正確に書こうとしない。割り切って、読み手が理解できるように、行動に移せるように書く。これがプロパー育ちだとかなり難しいみたい。

しかし、この手の訓練って、社歴数年までにたたき込まれるものだと思ってたんだけど、そうでもないのか?真っ赤に毎度直してくれた初職の上司に感謝。