知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

渉外初動の社内報告

悲しいことに、2ヶ月に1件のペースで手持ちの案件が増える。まあ某大手家電メーカーさんとかは毎週1件ペースだとかいう話なのでそれよりはマシなんだろう。しかし規模が全然違いますぜ。売上も人員もね。

それはともかく、案件が発生すると、取るものもとりあえず?会社の上層部に報告を入れる必要がある。これは大体1週間以内にやればよいだろうと当初思っていたのだが、とんでもなかった。当たりをつけるために事業部に製品を確認したり、技術内容をあたったりするし、時には供給元が購買部門になにか言ってきたりとかいうことがあるわけで、これらが正式な報告前に起こると、別ルートでトップに情報が流れてしまい、それが往々にして間違っているので、第一印象がゆがんで形成されてそれを矯正するのにものすごく労力がかかるのだ。

というわけで、発生したらもうその日のうちにできれば全役員+関係者向けに報告するように動く必要がある。提訴とか警告状の受領とかは、こちらのスケジュールが空いている時を選んでくれたりはしないので、一日外出予定が詰まっているとかいうときに入ってきたりすると悲惨である。メールと電話を酷使して指示を飛ばしまくり、つっこみを入れて修正をさせ、大体完成形になったところでさらに自分で手を入れて、できあがるのは夜中だったりする。

正式報告とはいえ、メールベースなので、夜中でも休日でもいいんですけどね。。。

報告の中身といえば、大した中身はなくて、こんなもんである。

1.提訴日/警告日
2.原告/警告元および被告
 米国の場合、被告は多数に上る。
 どこが一緒に訴えられているのか(競合なのか、販売店なのか、供給元なのか)は重要情報。
3.裁判地(訴訟の場合)
4.訴訟対象特許
 特許番号と技術内容の概略
 →これは解析担当に依頼する。
  半日で上げろとか無体な要求を出して毎度彼の首を絞めている・・・。申し訳ございません。
5.対象製品
 米国の侵害訴訟の場合、訴状には大したことが書かれていないので、対象特許のクレームと、薄ぼんやりした訴状の内容から当社のどの製品なのかを最大範囲で特定
 →その性質上、ここもほとんど解析担当に頼っている。
  意味不明なところがあったりするのでつっこむのがこちらの役目
6.対応方針
 受領直後で方針も何もない、というわけでもなく、被疑製品の分野、当社の売上規模、対象国などで大体の方針は決まってくる。概略こんな感じで進めます、と宣言しておくとこの後やりやすい。
7.その他の情報
 原告が起こしている他の訴訟とかがあれば。

この報告を出した後で、関係事業部に依頼して、被疑製品になりうる製品型番をリストしてもらい、これまでの販売実績と今後の予想をもらう。訴訟や警告の事業に与えるインパクト判断をするためである。これはできるだけ早いほうがよい。米国訴訟の場合は、事業部が出してくれた型番をもとに、米国販売子会社に売上とかは依頼する。あわせて、訴状が来たら送ってねと念を押す。

こうした社内の動きと合わせて、訴訟の場合は代理人をどこに依頼するか内部で検討、決めたらコンフリクトチェックを依頼。チェックでクリアになれば、そのまま動いてもらう。

米国訴訟の場合は、大抵一番最初にするのは、その裁判地に事務所のあるローカルカウンセルを雇うこと。当社の主の代理人は複数ケースで共通の事務所に(1箇所ではないが)依頼するが、案件ごとに裁判地がことなるため、そのローカルルール対応や裁判所の特徴に合わせて動くために現地の弁護士事務所の弁護士を雇う必要があるのだ。限られた役割になるので、被告間で共通のローカルカウンセルを雇うことも多い。そして、次にするのは原告代理人とコンタクトして応答期限を延長することである。応答期間20日でAnswerが出せることなんて特許侵害訴訟ではまずムリなので、ここで合意延長するのがほぼデフォルト化している。

弁護士の選び方については、そのうちまとめてエントリーしようと思っているが、今日は軽めにここまでで。