知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

削ぎ落とすということ

梅雨の頃から作業をしてきた特許出願中期計画も大詰めで(始めた頃は人ごとだったのに今じゃ現場責任者になっちまったorz)、来週は役員会の議題に挙げて方向性の承認をもらおうというもくろみである。当社が特許を出願して取る目的の再確認と、確認した目的を間違いなく達成するための目標の(再)設定。

この目的の確認と認識あわせが思いの外難しい。事業を守るため、他社との競争手段にするため、というのが良くある形だが、当社の事業分野の場合、事業上の競合他社は、どの会社も知財をまったく重視していなくて、ほとんど特許なんて取っていない。なので競合だけを見ていた場合、特に特許の必要性は感じられない。

別にその分野に特許出願や特許権が存在しないわけではない。コンシューマ市場でちまちまやっている我々の、遙か上にエンタープライズ・ハイエンド系のビジネスがあって、そこの事業をやっている会社がしこたま持っているという構図である。技術的にはそこで成熟したものを後から使わせてもらっているため、当社の主戦場では、特許が商売の先端とあまり関連しないという格好になっている気がする。

まあそれでも最近それなりに熱心に活動しているにはそれなりの理由と目的があるわけで、そこを日頃そんなこと考えたこともない方々に理解してもらうのはなかなか難儀。これまで色々やっては来たが、成功体験はあまり豊富だとは言えない。

そんなこんなで叩いて叩いて作成した資料に今週最後の打ち合わせをして、プレゼンターである上司が自分で喋りやすい形に整えたスライドが出てきたのが本日昼過ぎ。

あれこれダメだしされて跡形もなく修正してきた私の努力は何だったのよ〜、と叫び出したいくらいに換骨奪胎されていた。が、ストーリーに沿って間違いなく結論に導かれる形に組み立てられており、細かいデータの不整合はあるものの(それは私の管轄で責任だ)、ぐぅの音も出ない。これならすぐにちゃぶ台ひっくり返してあらぬ方向にいくのがお得意の役員連でもさすがにあさっての方向に持ち込むのは難しかろう。でもね、これからプレゼンする機会もあるでしょうからよくよく勉強してください、とかいうコメント付で送られてはね。

ああ悔しい!

と連呼していたら、

senri4000さんでもそう思うんですねぇ。意外だ。

と言われてしまった。もっとドライに割り切って考えてるのかと思われているようで。

しかし、ストーリーは見事に立っていて、よそ見できないように組まれているとは思うのだが、それがためにあちこちで結論を丸めたり、例外を飲み込んだり、枝葉を切ったりしている。正直なところ、間違いだとは言えないし、そういう言い方もできるとは思うのだが、なんというか、上司に、これは、こういうことだよね?と言われれば、そうです、とは言えるけれども、自らこのような書き方をすることはできない。正確さを欠くために、どうしても注釈をつけたくなってしまうのだ。そんなことをしたら焦点がぼけてつっこまれる隙を作るだけだとわかっているのに、ほんとうにそうなのか?と問われたときに真正面からそうですと答えられない気がしてしまう。そういうこともあるけれども、それが全てではない、というか。

職業意識が邪魔をしてる感じなんだよね、と同じ立場に置かれている同僚にぼやいてみた。確かに、上司は知財プロパーじゃないから、ここまで割り切った物言いができるというのは確か。でも自分のフィールドだからといって、ここを超えないと前にというか上には進めないだろうねぇ。うーん、きついな。