知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

若手のギモン(13):上がり姿は?

2000年に出した特許出願の拒絶理由が来た。最近中間処理をぼちぼちやってもらっている若手2号君が興味深そうに見ているので、おもしろ半分に(失礼)、『やってみる?』と聞いたら、『はい是非!』と非常に前向きな答えが返ってきた。が、本願の公開公報をみて難しそうな顔をして一言。

あの、これって、まずこの出願でどういう権利を取るのが目的なのかを考えて始めるんですよね?

・・・

まあ確かに。当社の場合、製品のライフサイクルが非常に短くて、現在の審査請求期間の3年でも、ぎりぎりに請求して待ち行列に入って2年超経過、拒絶理由が来たときにはすっかり昔話のような明細書の記載になっていたりする。いわんや10年以上前のものなんて。当然ながら発明者はとうの昔に辞めていて社内にいない。関連の事業もいまやない。製品上の実施?どこに聞いたら分かるでしょう。という状態である。

これを権利化して、なにかのポートフォリオに入れられるかと言われても、うーん、という感じだし、かといって、これ1件で権利行使を狙うために取っておく、というほどのものでもない気がする。なんでこんなの審査請求したんだろうねぇ?と正直なところ思わないでもない。

確かに、これじゃあ担当として目指すところが見えにくくて気合いが入りにくいか?

と思ったのだが、熱意とか意気込みとかの問題(少し前にTwitter上で盛り上がったけど)ではなくて、単純に、2号君としてはまずその位置づけをはっきりさせておかないと、取り組み方が変わってくる、と言いたげだった。

まあ確かに個々の出願が当社のポートフォリオ上どのような位置づけになる(見込み)ということを認識しておくのは、全体の特許出願戦略からはずれた個別戦術に陥らないために重要だと思うのだが、なんか違和感が。

それって、ぎりぎりのところで補正をするときとか、審判に行ってでも、分割をしてでも頑張ってこれを権利化するかどうか、という時にはもちろん考えるんだけど、今拒絶理由が来ていて、応答方針を立てるときには、出願当初明細書の範囲で、引かれた引例と審査官の拒絶理由に対して可能な限りチャレンジして有効な特許を取るべく思考する、ということだけで、それ以上でもそれ以下でもないような気がするんだけどな。(あまりここにとどまりすぎると蛸壺状態に陥るので、それはそれで危険なんだが。)

確かに、出願のランクによってメリハリをつけた対応をしないとリソースは限られているので云々、ということも言われたりもするんだが、ランクが低い(意義が薄い)案件だからといってそれなりの対応をしていたら、重要案件がいざ来たときにしっかりとした対応がぶっつけ本番でできるんかい?とか思ったりもするんだよね。訓練効果というか。とくに若いうちは全件に全力投球して経験値を蓄積しないとさぁ・・・。

とりあえず、本件はまだ拒絶理由通知が来たところで、事務所のコメントが到着するにはもう少しかかる(それこそリソース不足の当社は全件についてまずコメントをもらう。解説がないとこっちの手間に見合わないので)。コメントを見た上で、教育効果をめいっぱい狙って担当してもらうとするかな。

効率を上滑りに求めてしまうとすごく危険な気がするんだけど、それを納得できるように説明するのは難しい。質の高いパフォーマンスは膨大な量をこなした上にしか生まれない。ここは確信があるんだけれど、

そんな無理を言われても真似できませんから。

と言われることも多い(2号君に限らず)ので、あまりごり押しもなぁ。。。

なんというか、若手のギモンにかこつけて自分の心情吐露になっただけ?失礼しました。