知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

若手のギモン(17):最初?最後?

最近とみに更新が滞っておりまして申し訳ございません。。。コメント頂いたものも確認できておりませず。コメントの通知がFC2からなぜか来なくなってしまい(時々発生)、管理ページに行かないとさっぱり気がつかないという状態でございます。自転車操業もきわまれり、という状態なもので、余力がないというか、とほほな状態でございます。

さて、久しぶりの若手君のギモン。正直最近あまりネタになるような問答がなかったのだ(彼も色々つっこまれて必死なオーラが出ているし、短答試験もあったし(玉砕した模様だが))。

月1件程度のペースで国内の中間処理を担当してもらっている。今月の1件は、しばらく前に応答した案件に再度拒絶理由が来たので、そのまま担当してもらったもの。事務所からのコメントを見ていて、

あの、ここに、「最初の拒絶理由通知」って書いてあるんですが、これ、前回応答して補正してます。その後また来た拒絶理由通知なので最後の拒絶理由通知だと思うんですけど。

いやいや、2回目の拒絶理由通知が自動的に『最後の拒絶理由通知』じゃないからね。まず、コメントは置いておいて、拒絶理由通知自体を見ましょう。どこにも『最後』って書いてないよね?

えっ?『最後』って書いてあるものなんですか?

(前に最後の拒絶理由通知の案件を担当してもらった気がするんだが、気のせいか?)
「最後の拒絶理由通知」には、<>が3つくらい付いて最後って目立つように書いてあります。前の案件でも見てみて?最後かどうかで補正の要件が変わってくるんだから、出願人がはっきり最後か最初か分からないと困るでしょう。だから明示してあるんだよ。

(前の案件をしばらく検索していて)わかりました!最後って書いてありました!

しかし、この<<<最後>>>って書くという運用って、審査基準とかに書かれてたっけ?と改めて審査基準を見直してみた。当然ながら、ありました。

第?部 審査の進め方 4.3.3.3 「最後の拒絶理由通知」における留意事項

(3)拒絶理由通知に、「最後の拒絶理由通知」である旨とその理由を記載する。最後である旨を記載しなかった場合には、たとえそれが最後のものとすることができる場合であっても、「最後の拒絶理由通知」として取り扱ってはならない。

実務的には、この<<<最後>>>があるかどうかで見分ければ済むし、最後かどうかに争う余地がある場合はともかく、2回目以降の拒絶理由通知で最後じゃないときは出願人に不利益があるわけではないので、あまり気にしないのだが、若手君はどうにもすっきりしないようである。

本件は、1回目の拒絶理由通知での拒絶理由(29条2項)で引用された文献が3つ、2回目も29条2項で3つだが、引用文献の1つが入れ替わっている。拒絶理由自体は、まあざっくりしたもので、引用文献の中身が変わっているのに理由の文言は一言一句同じだ(-_-;)。いい機会なので、なぜ最初の拒絶理由通知なのか事務所に質問させたところ、事務所からは、

審査基準 4.3.3.2 二回目以降であっても「最初の拒絶理由通知」とすべき場合
(2)一回目の拒絶理由通知において示した拒絶理由が適切でなかったために、再度、適切な拒絶理由を通知しなおす場合の具体例c
『発明特定事項Aと発明特定事項Bとから構成される発明に対して、新規性・進歩性欠如の拒絶理由を通知したところ、Aについて補正がなされ、Bについては補正がなされなかった。この場合において、補正のなされなかったBに対して引用していた先行技術文献を変更して、再度拒絶理由を通知する場合』
に該当すると思われます。

という回答が来た。若手君はそれを読んでうなっていたが、ついにギブアップして

本件のどこがAでどこがBになるんでしょう?

と泣きついてきた。そりゃこれだけのコメントじゃわからんわな。確かに、質問ではどれに該当するんでしょう?と聞いたけれど、答えるときには理由を添えて本件へのあてはめを説明してくれなきゃわからないって。わからないから質問してるんだからさぁ。そして、本件へのあてはめを再質問させて返ってきた回答を読んでみたが、やっぱりよくわからない。この辺が限界か?本件の応答自体には影響ないしな〜。ということで、とりあえず流すことにした。

結局のところ、引用文献の入れ替えがあった拒絶理由が、補正の対象となった発明特定事項なのかどうかが微妙な線だったので、安全を見て最後にしなかった件だと思うのだけれど(拒絶理由もおおざっぱだし)、それならそういう感触も含めてちゃんとコメントして欲しいな〜、パートナーに相談したのか??と思ったことだった。

しかしね、Finalとnon-Finalならわかりやすいけど、拒絶理由通知の種類が「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」の2種類だっていうところがわかりにくくしている原因の一端ではないかと。

4.1 拒絶理由通知の種類
(1)「最初の拒絶理由通知」
一回目の拒絶理由通知は「最初の拒絶理由通知」である。また、二回目以降であっても、拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要となったものでない拒絶理由を通知する場合は、「最初の拒絶理由通知」とする。
(2)「最後の拒絶理由通知」
「最後の拒絶理由通知」とは、原則として「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものをいう。
二回目以降の拒絶理由通知が「最後の拒絶理由通知」となるかどうかは、形式的な通知の回数によってではなく、実質的に判断する。

『最後の拒絶理由通知』の導入時、2回目以降なのに最初って日本語じゃないし〜、と思ったのは私だけではあるまい。