知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

若手のギモン 番外編:仕事の納期

特許事務所と出願面談→発明要旨シート受領→明細書初稿受領→発明者チェック→発明者チェック完了(先週末:イマココ)という新規国内出願を担当している若手君。発明者から、出願予定日の問い合わせがあった。公開日の設定をしたいので、という理由である。

『今月末を予定しています、と答えようと思うんですが。』というので、『あなた自身は初稿のチェックはしたの?』と確認すると、『イヤ、まだです』とのこと。まったくちらっとも見ていないらしい。『月末までまだ半月ほどあるから、通常なら大丈夫だと思うけど、前回の件みたいに、修正を繰り返す必要があって、なんどもやりとりしたり、面談を再設定したり、という羽目になると間に合わないよね?』『そうですね。(深く頷く)』(いや、前回の件は、色々あって本当に時間がかかったのだ・・・) 

『今、中身を見ていない状態で、月末見込みって答えると言うことは、間に合いませんでした、ということは絶対できないっていうことだよ?どんなにこちらの思惑とずれた原稿が出てきていても、修正がうまくいかなくても、何が何でも月末には出願完了の覚悟で答えるって言うことだよ?』と念を押す。

『だから、通常は、この手の問い合わせに、中身を確認しないで回答するのは高いリスクを自ら進んで取ってしまうことになるから、禁じ手なわけ。更に言えば、発明者に原稿チェックをお願いする時には、最低でもその〆切までに自分もチェックを完了しておくのが必要だよ?チェック完了時に発明者が原稿を持ってきてくれて、その際質問があるかもしれないんだし、その場で答えられた方がお互いのためでしょ?』『そ、そうですね』と、その後しばらく黙り込んでいたが、

ということは、senri4000さん、後回しにできる仕事なんてない、っていうことですよね?

『その通り!』

いやでも、色々な〆切が重なってくると、どれもこれも間に合わせるほど速く仕事ができないんですが。
ど、どうしたらいいんでしょう。そういうときって、どうしてますか?

そういうときもこういうときも、私の日常はあらかたそうなんだが(苦笑)。

若手の段階では、仕事を受けられるかどうか=設定された納期にちゃんと完成できるかを自分で判断し、受けられなければ上司にその旨ちゃんと伝える、というのが基本になる。受けた後もできなくなるのが見えてきたなら、その時点ですぐに上司に伝えるのも同じこと。ずるずる納期を延ばしたりしてはいけない。あぶれた仕事を納期までに完成させるか、納期自体を動かして調整するかは上司の仕事になる。

というのは簡単だが、仕事が納期までに完成できるかを見積もるのはかなり難しい。同種の仕事をやったことがあっても、所要時間を計測する習慣ができていないと、だいたい3日くらい?とかものすごくアバウトな見積もりになってしまい、マルチタスクになると全くやくに立たない。このため、若手君たちには、口を酸っぱくして15分単位で仕事にかかる時間を計測して日報に書けと言っており、彼らは仕事中は日報のエクセルシートを開きっぱなしにして仕事をしている。

そして、今取りかかっている案件があり、さらに控えている案件もあり、という状況の中、相手に投げていた仕事が自分に返ってきたときどうするか。そのままTODOの最後に入れたり、一応絶対期限がないかどうか確認したり(中間処理の特許庁期限だけ見るとか)して、中身を見ないで未処理箱に入れていないだろうか。上の若手君の状況はまさにこれ。隣で見ていたのだが、発明者からの原稿を受け取っても、特にアクションする気配がない。

この『自分にボールが返ってきた時』に、このボールを投げ返すまでにはどのくらいの作業時間が必要になるだろうか?という当たりをつけるのがとても重要。そのためには、中身をさっと見て、大丈夫そう、手間がかかりそう、くらいの仕分けはしなくてはいけない。慣れない仕事のうちは、そうやって当たりをつけても所要時間の見積もりが全然精度がなっちゃいない、ということになるけれど、繰り返していけば、そして、実測をしてフィードバックするようにすれば、だんだんまともに見積もりができるようになる。

それができるようになってくれば、さらに、仕事のスピードをその案件の納期や他の案件との兼ね合いで調整できるステージに入る準備が整う。この段階に行けば、上司としては、納期までになんとかしろ、と言い放つだけであとは受けた本人の責任と裁量の範囲になるわけ。今の君からは想像がつかない世界だろうけど、一歩一歩頑張ろうね。