知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

発明の理解、というより

特許事務所で特許技術者の採用をしていた頃、端的に適性を見るための試験として、薄めの公報を渡し、

読んで内容を説明して下さい。
どれだけの時間をかけて読むかはお任せしますので、『説明できるようになった』と思ったら呼んで下さい。

というのをやっていた。

文章の内容を説明する、というのは、

(1)何が書いてあるか理解する
(2)枝葉の部分を落とし、本筋を抽出する
(3)相手に分かるように順序立てて話を組み立てる
(4)組み立てた内容に沿って実際に喋る

という一連の流れを要求しているわけで、特に学んだ覚えもなく自然にこれができる人もいれば、上記ステップのあちこちで引っかかる人もいる。聞けばどこでひっかかっているかはわかるもので、特に(1)と(2)で引っかかる人は、残念ながらあまり特許技術者に向いているとは言えない。(1)や(2)ができていれば、(3)と(4)はアウトプットの訓練なので、それなりに練習すればなんとかなるのだが、(1)や(2)を大人になってから身につけるのは、かなりしんどい。

小学生の男の子で、国語の『文章を読んで答えなさい』問題が超苦手で、どこのことを問われているのかさっぱり見当がつかない、というタイプによく遭遇するが(息子たちだよ、全く)、(1)や(2)ができないというのは、このレベルから基本的に進歩していない。柔軟な子ども時代にできなかったことを成人してから身につけようというのは当人がかなり自覚的で、さらに、指導する方にそれなりのノウハウがないと難しい。そして、わざわざ中途採用でとる人材にそれほど育成投資をかけられない中小事務所としては、残念ながら見送ることが多いわけだ。

まあただ小説や随筆をムリヤリ問題にしている国語と違って、特許公報は様式も決まっているし、背景技術⇒課題⇒解決手段⇒作用効果というストーリーに則って書かれているわけだから、読み取るコツさえ押さえれば、数こなしていくうちにできるようになる、そして、逆にそれに沿って書くこともできるようになる、かもしれないのだが。あまり試したことがないのでよく分からない。

なんで今頃こんなことを書いているかと言えば、中間処理の報告をしてくる若手君の報告が、資料をきっちり作っているにもかかわらず、報告する度に躓いていて完了しないので、本人も悩んでしまい、一緒に考えたところ、

(1)一度にまとめて報告しすぎている。
(2)資料が基本的に一時資料からのコピペなので、読んでいるようでちゃんと読めていない。ということは、理解しているにはほど遠い。

ということが判明した。

そこで、初心に返って(というか、最初はもっと基本的なところから始めなくてはならなかったんだけど。すまん。)、本願発明の理解から始めることにした。

ひとまず、背景技術と課題を読んで、そこまで報告して。

である。本人、読み込んで、分からないところは調べたつもりで報告に来たが、やっぱりまだまだつっこみどころ満載で、課題までの説明の間に、『調べて出直してこい』3回(^^;) あまり『疑問を持って』文章を読むという習慣が形成されていないようで、『ふーん』と読み流している(素直に信じている?)ことが多いようなのだ。それでは理解が深まらないので、ひたすら質問を繰り返す。質問ばかりされていれば、自分でも『疑り深く』なって、より深く読み込むようになるだろう。きっと。

ともあれ、ここまで徹底的に読み込んで調べさせて、報告させれば、さすがに背景技術と課題は理解できたと思う。次に解決手段を(クレーム/実施例/作用効果全体を読み込んで)理解して報告に来る予定だが、そのときに課題のことをちゃんと覚えていられるかどうか、多少の不安はあるけどね。覚えていないとなると、その場で総復習だなぁ・・。それって、そもそも理解したと言っていいんだろうか??ま、楽しみにしています。

って、これを、本願と、引用例複数についてやって、拒絶理由についてもやって(短いけど、訳分からん度は公報より上だ)、それで初めて全体像が見える、んだけど、全体像を見るために必要なだけ各文献の内容理解をキープできるでしょうか。果たして。乞うご期待、みたいな。

いや、冗談でなく、報告をいままでここまでの全体でさせてたので(普通中間処理ってそうだよね??)、どこで躓いているのかやってみないとわからないのでした。つくづくすみません・・・。

どこがいけないのかわからないっていうのは分析不足で指導不足!

と上司に怒られました。ハイ。頑張ります。