知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

職務発明制度フォーラムメモ その3

産業横断 職務発明制度フォーラム、ワシントン大学 竹中教授の基調講演「日本の制度との対比における欧米諸国の職務発明制度」のメモと所感。

竹中先生の登壇時には既に予定時間がかなりオーバーしていて、30分のところ15分でと言われてまして、等とご本人も『予想してたんですけど』とおっしゃって笑いを誘っていた。なので、欧米各国との比較の詳細は資料に譲って、ポイントだけを述べられていた。

おそらく一般的なイメージとして、米国は契約に任されており、ドイツは詳細なガイドラインを持っていてガチガチというものがあるのだけれど、その他の例として、

英国型:
 職務発明の特許を受ける権利が法人に帰属する、
フランス型:
 雇用関係における発明を、Mission内発明、Mission外発明、自由発明の3つに分け、Mission内発明については使用者に特許を受ける権利が帰属する

が紹介されていたのが個人的には目新しかった(単なる不勉強です。すみません)。

諸外国に比べて、日本の『職務発明』の定義はかなり狭いとのことで、フランス型のMission内発明とほぼ同じ程度らしい。狭い割に、広い国と同様のメカニズムになっている分、使用者にとっては保護が薄い、ということのようである。

また、よく言われることだが、ドイツは詳細なガイドラインを持っていて、非常に発明者に有利なように見えるけれども、実際に特許庁での仲裁等に持ち込まれた場合はガイドラインによる算定よりもかなり低額に計算される実務になっていること、ドイツ実務界としてはガイドライン自体を実態に合わせたい要望をずっともっているが、何しろ労使関係で組合が強いお国柄のため、修正変更ができないという事情があることが改めて紹介され、ガイドラインだけを見ていても仕方がないということが確認された。

また、現在中国で職務発明制度について日本に類似したものが提案されていて、これがそのまま成立してしまうことにアメリカではかなり危惧を抱いていることも紹介されていた。ぶっちゃけていうと、職務発明制度リスクとまで言われている日本の制度を真似してどうするんだ、ということのようである。

さらに、ドイツで研究されていたときの話として、旧東ドイツの研究者の方から、東独の発明者に対する補償は素晴らしかったけれども、企業に対するインセンティブが全くなかったので、産業の発達には寄与しなかった、という話を聞いた例を挙げられ、イノベーションを促進するためには、企業側にとって適正なインセンティブが存在することが必要だという結論を導かれていた。

ということで、詳細は資料を参照して頂くとして、竹中先生としては、フランス型のような形(一定範囲については使用者帰属にする)に制度を修正していくのがよいのではないか、という意見をお持ちのようだった。