知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

Law & Technology 60

季刊誌だから、というのと、あまり周りのブロガーさんたちに読まれていないのでプレッシャーがかからない(汗)のとで、つい後回しにしてしまうこの雑誌。自腹切って買ってるんだからちゃんと読もうよ・・・。ということで、ようやく本号読了。

最も関心があったのは、三村弁護士による「平成23年改正特許法施行後における特許関係訴訟の状況と留意点」。

以前長島大野常松でセミナーに出たときの感想を何回かエントリしたように、訂正審判の時期的制限や特許侵害訴訟の再審の制限など、権利成立後の改正としてはけっこう大きなものだと認識している。どちらも104条の3創設以降の侵害訴訟での無効抗弁・訂正の再抗弁と特許庁での無効審判・訂正請求の審理との関係を取り扱うもので、実務上はこれらをどう組み合わせて戦術を組むかが重要ポイント。

で、侵害訴訟の被告サイドとしては、これまで訴訟において無効の抗弁を主張しつつやはり特許庁にも無効審判を請求するというのが王道というか通例であり、裁判所でも特許庁での審理状況を気にして動くという形だったと思うのだが、本稿においても、

法改正前は、特許権侵害訴訟において特許権者勝訴の判決がされて当該判決が確定したとしても、その後に無効審決が確定した場合には、再審の訴えにより侵害訴訟の判決が取り消されると一般に解されていたことから、侵害訴訟の被告が訴訟と並行して無効審判を請求することは、特許権者による侵害訴訟の提起に対する重要な対抗措置と位置づけられ、また、侵害訴訟と並行して被告の主導により進行する争訟手続を開始することで紛争全体において被告が主導的に進行させる場面を創出する意味を有していた。

とされている。これが、

改正法施行後においては、無効審判を請求したからといって、特許権侵害訴訟の進行において、無効審判の進行状況や判断内容が必ずしも考慮されるとは限らないこととなった。

となる。確かに、裁判所としては、無効審判の動向を気にせずに自分とこのスケジュールに沿って進められる方がやりやすいといえばその通りなので、特に東京方面だとガンガン進めてしまわれるような気がとってもする・・・。

正直なところ、被告サイドの実務家としては、無効審判よりも侵害裁判所がずんずん先行した場合であっても無効が確定すれば最終的に再審が可能であることを持って無効審判を請求していたかと言われるとそこまで考えていたわけではない気がするが、最終的な担保としてそこまで考え得たというのは確かにあるのだろう。

どちらかといえば、本稿にもあるように、無効審判を請求しておけば、その間は訂正審判でなく訂正請求しかできなくなるので、特許権者が(時期的に)自由に訂正してくることを避けるという面が大きかったように思うし、今後もそこは変わらない。要するに、審理が無関係に進行するのでその負荷をどうさばくか、という問題に帰結するってことだわね(余り嬉しくないかも)。

その他の記事としては、知財系では、黒田弁護士による「欧州統一特許保護制度の歴史的考察」が掲載されており、先頃成立した欧州統一特許に至るまでの欧州での挫折の歴史(!)がまとめられていて分かりやすかった。意匠商標がOHIMでどんどん進んでいくのを尻目に、特許ってほんとに試行錯誤というか挫折ばかりしていてずっと担当していたら心が折れるよなぁ、と思いつつ読んだ。

冒頭の私的独占関係の論説も守備範囲を外れてはいるが、大変興味深く拝読した。

そして、毎号の最新知財判例紹介。一通りまとめて読むことが出来(高裁37件・地裁38件)、便利だと思う。