知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

支払うのは誰?

各種の特許ライセンスのRoyalty支払シーズンである。四半期とか半期とか纏めて報告支払が多いので、7月や1月は集中してしまう。

しばらく前に組織変更があり、これまで報告書に署名をお願いしていた事業側の役員の管掌が変わってお願いするわけにも行かなくなり、さりとて変更のために同種のポジションに一人の役員という配置でなくなってしまったために、面倒(!)なので管理系の役員に統一してお願いすることにした。人が少ないのでこの方は親会社の役員も事業会社の役員も兼務されているのだが。

そして、ライセンス契約は、ライセンサーの意向で事業会社名で締結していたり親会社名で締結していたり色々である。当社としては、中核となる事業会社+必要に応じて関連会社(兄弟会社)という形で締結するのを基本にしているのだけれど、これをやるともし親会社が変わった場合(たとえば丸ごと買収されるような場合)、そのままライセンスが生きてしまうので難色を示されるライセンサー(特に事業会社系)も多い。このような場合は致し方なくコントロール権限のある親会社名で締結することになる。社内手続上は会社間の処理が増えて非常に面倒なのであるが。

こうした場合に少しでも手間を減らすため、契約者は親会社でありカバー範囲は株式過半数所有の子会社までとして、実際の報告支払行為は中核となる事業会社(実際に実施行為を行う会社)が行うことを契約上明記して対処することもある。実務上の手続を契約者とは別の会社が行うことはしばしば発生するので、この対応は受け入れられることが多く、また、欧米の事業会社ではこのような機能を別の会社に担わせていることも珍しくないので、先方も同様であったりもする。Invoiceの発行者は別会社というわけ。

で、話が戻ると、親会社名で契約している件の報告書を作成した担当が、親会社の役員名として署名をもらおうとしていたので、

それは報告支払を事業会社から行うことになってなかった?確認して。

と突き返したのであった。単純に契約者名だけ見ているとそうなりがち、という話で、何か変更するときには契約全体を見直すなり契約の要約書を見直すなりしましょうよ、ということで。これは契約交渉を私自身がやったので覚えていただけだから〜。こんなチェック機構は危ない(-_-;)。

一方で、ライセンサーの側も平気で新設したっぽい機能会社から特に連絡もなくInvoiceを勝手によこすようになったりして、支払自体はInvoiceがあれば特に問題なく行うことができるものの、これで納税して証明書を取ろうとすると税務署に契約上の支払先と一致しないといって拒否られることがあるので要注意である。