知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

弁理士という看板の代金(1)

現在、弁理士会の月会費は15,000円である。以前は月額2万円だったところ、2011年10月から暫定的に値下げされ、その後恒久値下げになった。

先日、弁護士弁理士さんと飲んでいたときに、

弁理士会の会費は安いですよね〜。弁護士会の3分の1です。

とおっしゃった。弁理士会は日本に1つだけだが弁護士会は地方単位で単位会があるので多少ばらつくようだけど(参考の一覧表)、確かにずいぶん高い。他の士業は?と思ったところ、まとめて下さっている税理士さんの記事を発見(弁理士は入ってないけど)。

弁理士試験合格を経て弁理士として活動しようと思うと、弁理士会への登録が必要で、さらに、今では登録前に実務修習が義務になっているので、結構これにもお金がかかる。登録時にかかる費用は弁理士会への手数料(48,000円→35,800円)、当月会費、登録免許税(6万円)の合計110,800円。実務修習の手数料は118,000円。以前は登録にかかる費用は25万円とかかかった気がする(うろ覚え)のでずいぶん値下がりしたものだが、その分実務修習にけっこうな金額がかかるので登録貧乏になることはあまり変わらないかも。

さて、これらの費用を誰が払っているのかと言えば、実は色々で、特許事務所勤務の場合、丸ごと事務所が払ってくれるケースも少なくないと思うけど(私が以前勤めていたところはそうだった)、登録料は自腹とか、登録前の実務修習費用は自腹とか、色々パターンのバリエーションがあるようだ。受験費用を事務所が払ってくれたりは普通しないので、その延長でどこまで払うかの線引きという話なんだろうけど、まあ会費まで個人に払わせるところは特許事務所の場合それほど多くはないと思う。これは、代理人業務を行うためには弁理士資格が必須で、特許事務所としてやっていく上では弁理士登録はその個人のみならず事務所にとっても利益になることが自明だからだろうと思う。

では、企業勤務の場合どうかといえば、その昔初職会社で勤務時に弁理士試験に合格した頃は、当然のように会社に登録費用も会費も負担してもらった。私の前にも何人も弁理士を輩出していて、全員そのようにしていたので、特に疑問なく問題になることもなく支払ってもらったように記憶している。今から思えば牧歌的だったというかなんというか。ちなみに弁理士印も会社が作ってくれた(今でも使っている)。

登録費用や会費は個人の資格に付随するものなので、趣旨から言えば個人が支払う性質のものである。代理人としての報酬を得るために不可欠な費用ということになるのだろう。なので、支払い方法としては、事務所や会社が負担するとしても、弁理士個人に会費分を上乗せして給与を支払い、個人が弁理士会へ納付するというやり方と、事務所や会社が直接会費を支払うやり方の2種類がある。多少税金関係で差異が出るはず(うろ覚え)。

もっと言えば、会費分をきっちり上乗せするなんていうことをせずとも、資格をもって代理人報酬を得ているのだから、その収入の中から自分で会費を捻出して支払うのが筋だろう、という考え方もできる。独立して弁理士業を営んでいれば当然そうなるわけだ。特許事務所に勤務している場合、弁理士個人の収入が自分の稼ぎにどれほど連動しているのかはその事務所の給与体系による。この度合いによって、同じ事務所にいてもそこに雇われているのか自営業者に近いのかが決まってきて、それが会費の負担方法にも影響している、かもしれない。

一方、企業勤務の場合、専属代理人として雇われ、給与は代理人報酬としての性質を持っている、ということはめったになく、通常、その企業の人事制度に則って給与が決まっていく。このため、会社が(上乗せしてでも経費としてでも)負担してくれない場合に会費等を払おうとすれば完全に自腹になる。そして、そう考えた場合、登録料はもちろんのこと、月々の会費額も個人が支払うにはけっこう重い。

最近は、企業内で弁理士登録可能な人が増えており、この全員の登録料を負担していては会社の経費がばかにならず、その費用対効果も明確ではないため、負担する人数を絞ったり、全く負担しないという方針に切り替わったりする会社も出てきている。確かに、数十人規模で年間18万円@人は

それ、どうしても必要な経費なの?

と槍玉に挙がりやすいだろう。現状、企業勤務で弁理士登録をしている人の大半は会社が会費負担をしているようで、これがある日なくなったらどうするか、自分で会費を払い続けて弁理士という看板をキープするのか、その代金は自分で払うには高すぎるとして登録を抹消するのか、というのは悩ましいところのようである。

ここまでが前置きで、私の場合どうなの?というのを書こうと思っていたのだけれど、長くなったのでエントリを分けることにする。