知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

Inter Partes Review

シンポジウムの第1セッションその2「Inter Partes Review The First Year」。

おさらいの意味で、Inter Partes Reviewを、従前のInter Partes Reexaminationや訴訟における無効主張と比べた特徴。

1. Limited Duration 結論までの期間が短い
 Inter Partes Reexaminationの時代には平均36-39ヶ月かかっていたところ、審理開始決定が出てから12ヶ月いないの決定が義務づけられている。IPR申請から審理開始決定までは平均5ヶ月。ということは、申立から1年半以内には結論が得られるということになる。

 訴訟で無効主張をする場合、Summary Judgementの申立が認められない限り、invalidityの判断もtrialにて行われるため、訴訟の最終段階まで持ち越される。有効性判断についてのSummary Judgementは認められにくい。

2. Limited Discovery ディスカバリーは限定的
 発明日の立証や専門家証言などに限られるらしい。上記のように、訴訟で有効性の判断はtrialになるため、その頃までにはfull discoveryが終了しているわけで、負担が重い。

3. Settlement Opportunities 和解で手続を終結できる
 従前と異なり、当事者間の和解でIPR手続を終結できるようになったことで、IPRを早期和解の機会として利用できるようになった。

4. More lenient standards より無効にしやすい判断基準
 クレーム解釈基準、立証責任の両面で訴訟よりも緩いため、より無効にしやすいと考えられる。

これまで、まだ最終のdecisionは1件も出ていないので何とも言えないが、審理開始決定は蓄積している。その中で、要注意と思われるのが、無効理由(grounds)の絞り込み傾向。Patent Trial and Appeal Board (PTAB)は、"redundant"とか"cumulative"とかで50%以上の無効理由を拒絶しているらしい。

 たとえば、IPR2013-00075では、102条に基づく請求は認められたが、同じ文献についての103条に基づく請求は拒絶されている。同じ文献に基づいて新規性と進歩性相当の主張はするのが当然というケースも少なくないと思うので、これは厳しいな、という印象。

 怖いのは、申立書に書いてしまったことで、審理対象から外れた無効理由にまでestoppelが生じる可能性があるため、どれだけの理由を申立てるのかについて相当気を遣わなくてはいけないということ。Invalidity Contention張りに、なんでもかんでも全部突っ込んで並べるというわけにはいかないだろうけど、ここまで極端に絞らせなくてもいい気がするんだけど。


IPRを理由として訴訟の進行が停止するかどうかは気になるところだが、法定期間として上限が決められているおかげで停止される可能性が高いということはよく聞かれる。裁判所としては、従前と同じような判断基準で判定しているらしい。認められなかった場合でも、訴訟のtrial前にはIPRは終了する可能性が高いため、その結論を持って訴訟の動向を左右することは可能(和解しても良いし)。