知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

定額払のバリエーション

前回のエントリーにコメントの形で質問をいただいたので、コメント返信にしようとしたら、長くなったので別エントリーに。

記事中に、出来高払いと定額払いがあって、定額払いは減価償却費となるということでしたが、ここでの「定額払い」の意味は、契約一時金としての支払いのことでしょうか。
それだけでなく、「契約一時金を例えば3年間に渡って分割払いするという意味での定額払い」(こういう形があるかどうかもよく分かりませんが)も含むのでしょうか。

「契約一時金を3年間にわたって分割払いする」という形は存在します。契約一時金として3億円を支払うが、その支払いは毎年1億円ずつ分割払いとする、というような形です。(一時金の額が大きくなるほど、資金繰りの関係でこのような取り扱いは増えます。)そして、これは、この3億円を契約締結時に全額一括払いで支払っても、分割払いで毎年払っても、あるいは締結時に半額(1億5千万)、その後毎年5千万円ずつ分割払い、という形であっても、ロイヤルティ額自体は定額の3億円で変わりません。変わるのは、支払い方法と支払い時期のみです。

したがって、どちらも前回の記事中の『定額払』に該当します。また、会計上の取り扱いも同じで、契約締結時に全額(上記例なら3億円)を資産計上します。分割払いの時期や金額とは関係なく、契約期間(長ければ税法上の上限期間:無形固定資産なら8年、長期前払費用なら5年)で按分して定額で減価償却します。

「契約期間中は、使用している限りにおいて、毎月(又は3〜6ヶ月毎に)定額のロイヤルティが発生する」という契約をした場合(こういう場合が実務上あるかどうか分かりませんが)は、その定額のロイヤルティは毎月の固定費(顧問料と同じような形?)になりますよね(減価償却費ではないような気がします。また少なくとも出来高払いのような変動費でもない)。

そして、このような契約の場合、対象特許を使用しなくなったらその月からその定額のロイヤルティの支払い義務は無くなる、ということになるのですが、こういう契約形態は現実にあるのでしょうか。

この種の契約形態は存在します。当事者間の取決め如何なので、合意すれば何でもできるわけですが、実際にこうしている例も見たことがありますので、理論上あり得るけれど実際はしないなんていう類のものでもありません。最低保証額を定めるミニマムロイヤルティと、ロイヤルティの上限を定めるマキシマムロイヤルティを同額で合体させたような支払条件で、かつ、ミニマムロイヤルティといっても、ゼロの場合は支払い不要ということですね。

で、このような場合、販売量によってロイヤルティの金額は変動しませんので、出来高払いには該当しません。使用の有無に支払い義務の発生が依存しますので、資産にもなりません。但し、特定の製品に特許を使用するための支払ですから、その製品の原価であることは間違いありません。実務としては、1ヶ月を締めたときに、特許が使用されていて支払いが発生するのであれば、その金額を関係製品の原価に反映させて計上処理するのが一般的だと思います。

製品に直接紐付けが可能な費用であるという意味では、販売管理費の一種である顧問料とは少し違いますね。