図書館で借りて読んでいる。
- 作者: スザンヌ・スコッチマー,青木玲子,安藤至大
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
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1章の、インセンティブ制度の歴史は非常に面白い。まとめて読んだことがなかったこともあるのだろうが。
古代から創造や発見のインセンティブは色々と模索されており、その歴史の上に現在の知的財産制度があるというのがわかる。資金援助、賞金、そして知的財産制度となる。資金援助や賞金制度では、情報の公開よりも秘密化の方向にインセンティブがかかる嫌いがある。
このような問題を解決する手だてとして現在も続いている3つの方策が挙げられている。特許制度の決して避けられない問題として、特許とは発明がなされた後に報酬が与えられるものであり、研究に必要な資金をどのように調達するかという問題を何も解決しない点がある。・・・20世紀を代表するような発明の多くは大規模な設計チームや研究施設を必要としていた。このように技術的な問題として、もはや発明は地下室の日曜発明家の手には負えないものになってしまったのである。
昔から問題点は変わっていなくて、解決策も変わっていないのね。今や(3)は持ちきれなくなってきていて、(2)を究極化しているのがIntellectual Venturesとかなんだろうか?(1)起業家になる:シリコンバレー方式
(2)研究開発自体をビジネスにする:受託研究、コンサル、スピンオフベンチャー立ち上げ
(3)既に確立した企業が内部で研究開発をする
この解決方法も色々模索はされているけど、特許流通市場はやはりちゃんと形成されているとはいまも言い難く、今後も確立するとは思えない。オークションとかも色々試みられてはいるけれども。特許制度の持つもう1つの大きな問題は発明をどのように現金化するかに関するものである。最も単純な方法とは、発明者が特許を売却し、追加的な開発とその製品化は他者に任せるやり方である。しかしそこで問題となるのは、エジソンが指摘したように(そしてこの問題は現在でも解決されていないが)、発明者と投資家の間で特定の発明が持つ価値について合意が取れることは滅多にないという点である。このような場合、発明家にとっては自分自身が製造者になる以外の選択肢はないに等しい。
ここまでよんで、なんというか特許制度の本質的な問題はずっと解決されないまま、他に欠点を補ってくれる制度がそれこそ発明されないので、そのままずるずる来ていると言うことか?とちょっと悲しくなった。制度設計は難しい。ここへ来てどんどん欠点の方が目立っている気がするのだけれども。