知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

盗作と著作権侵害

仕事柄、米・中・日の知財関係訴訟のウォッチングをしている。気になる訴訟の動きはもちろんだが、今日各国の裁判所に提起された訴訟や口頭弁論が行われた訴訟などが日報という形でメールされてくるのだ。サービス会社はここ。

で、この訴訟日報メールを見ていたら、こんな事件が目に付いた。

****本日の東京地裁 知的財産訴訟事件**** 
原告:槇原範之
被告:松本晟
請求内容:侵害不存在確認
本日の手続:証拠調(本人・証人)
事件番号:平成19年(ワ)第4156号

あらら、訴訟になっていたんですね。本件。証拠調べの模様は、各所でニュースにもなっているようで。
槙原敬之vs松本零士氏が法廷で対決

問題になっているフレーズは、槙原氏作詞作曲の楽曲「約束の場所」(歌はCHEMISTRY)内のさびの部分。

  「夢は時間を裏切らない/時間も夢を決して裏切らない」

これが、松本氏の「銀河鉄道999」の(有名な)セリフの著作権侵害かという問題。

  「時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない」

侵害判断手順のエントリーで、著作物性の有無を見て、次に創作性のある部分を利用しているかどうかを見るという手順を載せたけれど、このケースもその手順に従って見てみたい。

「銀河鉄道999」のセリフの著作物性については、かなり短くはあるけれど、十分創作性があるフレーズだと思う。では、次に、歌詞の方は、この創作性のある部分の利用に当たるのか。確かに、『夢』、『時間』、『裏切る』という言葉が共通して用いられているけれど、999の方が『裏切らない』-『裏切ってはならない』という組み合わせに表現上の特徴があるのに対して、歌詞のほうはどちらも『裏切らない』で対句になっており、特徴的部分の利用とはいえないのではないかと思う。これだけ短いフレーズになると、創作性の幅が狭まるので、ほとんど同一でない限り、侵害が認められるのは難しいと思うのだが、どうだろうか。

著作権侵害といわゆる盗作はイコールというわけではないようだけれども。そして、松本氏は、謝罪にこだわっているみたいだけどね。