ずいぶん更新が空いたのは、大きな会議を主催したら燃え尽きたというか、気が抜けて体力も気力も底をついたのでアウトプットパワーが残らなかったからです。。。
渉外業務の話。
なんだか引き継ぎがうまくいってない、ということをさんざん書き散らしているのだが、どうも、自分ができていることが綺麗に整理されていないので、伝えきれないのではないか?と思い出している昨今。まあこれは渉外に限らずなんだけれども。私なりに整理したものは、グランドデザインというエントリーにした。これをもう少し解説をさらに加えてボリュームアップして資料として渡してある。
先週初め、全渉外案件についてスケジュールを出さないとまずいよね?という問題意識の元に、案件ごとにスケジュール作成の指示が下りていた。今日東京支店に行っていて、それについて上司を含めて打ち合わせをしたのだが、上司の切り分け方がすっきりしていて非常に明快だったのでメモ。とはいえ、担当の方はいまひとつピンときていないようだったのが難しいところだな・・・。
およそLegalの仕事というものは、以下の3つのフェーズに分かれる(あいかわらずカタカナ語の好きな方である。以下、日本語は私)。
特許侵害警告・訴訟で言えば、まず訴状なり警告状なりを受け取ったら、1. Fact Finding(事実確認)
2. Evaluation(評価)
3. Execution (実行)
1. Fact Finding
事実関係をしっかり押さえなきゃいけない。特許は何で、何件あって、被疑製品は何で、その技術構成はどうなっていて、その売上は、ということがFactですよね?これは、事実なんだから、『こう思います』じゃなくて、「Yes」か「No」かの問題の筈。とのこと。そりゃそうだ。業務に即して言えば、こんなところだろうか。
(1)技術的・特許的な側面のFact Finding
i)対象特許自体
・警告・訴訟の俎にのっている特許の書誌的事項の確認
権利者、有効に存続中かどうか、権利の成立時期と満了時期
ファミリー、分割・再発行等の履歴と関連出願/権利の有無
・特許の内容
クレームの数(独立・従属)⇒検討対象のボリューム
クレームのカテゴリ(装置/方法/システム)
権利範囲(構成要件)
ii)被疑製品
・構造/電気的構成/機能・処理方法
・特許との関連性:関連がありそうな部分を特定
・権利者から特定されている被疑製品以外にどこまでを対象として考えるか
iii)属否
(a)真っ黒(ピンポイントで踏んでいるケース、規格準拠でそのもののケースなどなど)
(b)真っ白(なんかの間違いじゃない?といういくらなんでも外れてるケース)
(c)グレー(主張される余地がある。どの程度なのか、どんな主張をされそうか。反論はどの程度できそうか)
(2)営業的側面のFact Finding
i)被疑製品の販売規模
・(1)のii)で特定した被疑製品範囲に入る製品すべてについて
・過去(権利成立/提訴から6年前まで(米の場合)〜)の販売台数と売上
・将来の見込み
(3)Indemnification関係のFact Finding
i)被疑製品(部品)のサプライヤーの特定
・被疑製品自体が購入品の場合
・ある部品が対象特許の構成要件すべてを充足する場合
・サプライヤーの型番特定
ii)購買契約が有効に存在しているか
・Indemnification 条項が存在しているか
・その条項の内容は?(技術協力/防御/補償・・・)
2. 評価のフェーズ
押さえた事実を材料に、この先どう進めていくのかを考える。ここで、解決すべきイシューが出てくるはず。大きなイシュー、それを分解したサブイシューをきちっと考えること。例えば、特許が有効で属否が真っ黒だというのであれば、どうするんですか?取り得る方策は3つしかないはずだよね?(といわれて直ぐに出てこないのもどうかと思うけど。難しく考え過ぎなんだろうか・・・)おっしゃるとおりで、どうころんでも3つしかありません。
①止める
②ライセンスを受ける
③回避する
で、①と②については、将来はそうするにしても、過去は消せないので、いかに値切るか、というイシューになりますな。
ここの評価のフェーズで出てきたイシューに対して、3.の実行フェーズでどうやって答えを出していくかを段取りをして決めていく。ここで初めてスケジュール、という話になります。で、1のフェーズが全部完了しないと2に進めないわけではなくて、ざっくりつかんで2に移り、おおよその方向を決めてあちこち動きつつ並行して1の事実関係の情報収集をする、ということもあるわけです。(そうそう。フェーズ分けをすると、ウォーターフォールのように考えがちで動きが滞る傾向があるのだが、どちらかというと、サイクルを回すくらいのイメージでいた方がいいと思うな。)
なので、スケジュールを描いていくには、まずはその案件が、現在どのフェーズにあり、イシューは何で、それに対してどう実行する計画を立てている、というように立体的に見ていかないと、ただスケジュール表を作っても意味がないということだね。
なんというか、こういうのって、ほんと習慣づけが重要だと思ったことだった。意識してそのように考えるようにしないと、アウトプットの質とスピードがまったく違ってくる。自分としては、かなり無意識に(切り分けないで混沌とした中で)全体を頭の中に描いていて、全体デザインに従ってスケジュール感を持ってやってきたので、切り分けて質問されれば答えることはできるけれども、自分からそのように整理して伝えることはできていなかったと反省。人は自分がやってきたようにしか人に教えられない。
問題は、上司は特許侵害の分野の経験があるわけではないので、上記のように切り分けることはできても、その切り分けた中で具体的業務に落としてやってみせることができない。そして、担当の方は、ぼんやりとしたイメージしか持てていないので、自分で切り分けていく力が不足しているというところ。
手の離し方がまずかった、と今更反省しても、なんだけど。しばらく意識してフォローしないといけないだろう(しかし、しばらくっていつまでだ??)。