知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

ボールを受け取ったとき

新年明けてからこちら、雑感系のエントリばかり書いていて(まあそういう年にしようとは思ったのだけれども)、Twitterにご案内を載せるのも憚られていたり。仕事も一応しておりますので、本日はそっちのネタで。

渉外最前線の法務の若手君、頑張っちゃいるけどこの怒濤の案件数と指導者の欠如の中ではなかなか厳しい。とある米国訴訟でInterrogatoriesが来ていたのだが、情報共有のためのTV会議では、『期限の延長を代理人で協議中です』、と言っていた。中身については言及なし。

なのでこちらとしては、First Setでもあることだし、それほど実質的な内容のない、言い換えれば、法務と代理人だけで処理が可能な内容なのだろうと推測していた(今思えば、この時点で、中身について問いただしておくべきだったのだが)。最近の案件は、代理人とのやりとりメールのccがこちらに落ちてこないので、ちゃんとブリーフィングをしてくれないとこちらとしては対処のしようがない。

ところが金曜の午後遅くになって、『期限の延長がなくなりましたので、火曜日の昼までに以下の質問についての回答をお願いします。』というメールが入ってきた。おーい。なんでそうなるんだ?

電話してよくよく聞いてみれば、代理人がJDGで協議の結果、期限の延長をするよりも期限通り出す方がいくつかの点で好ましい、という結論になったとかで、そのメールが金曜に入ってきた、ということらしい。すっかり延長されるつもりで放置していた法務の若手君としては、焦ったのだろうが、仕方なく問い合わせメールを打ってきたというところなのだろう。

こんこんと言い聞かせたのだが、延長は延長にしか過ぎず、質問に答えなくてよくなるわけではない。どのみち質問に回答する作業は発生するのだ。なくなる可能性があるのなら、無駄な作業は避けるべきだけれど、そうではない。だからすぐに手をつけたっていいはずだし、他人に依頼するのであればなおのこと、延長されるかどうかはどうでもよくて、すぐに手を打っておくべきなのだ。

今回のような質問状に限らず、自分のところにボールが投げられたときは、そのボールを打ち返すまでの期限がどうあれ、受け取った時点で、実作業が自分のところで収まるのか収まらないのか、自分でやるならその作業にどのくらいの時間がかかるのか、他の人に依頼をかけなければいけないのであれば、どのくらいの期間を見ればいいのか、また、その依頼にかかる自分の作業時間はどの程度になるのか、これらを見積もって、対処できるように、処置しておかなくてはいけない。

よくある間違いは、期限に余裕があるものだから中身を見ないで放置しておき、いざ手をつけようとしたときになって、実は膨大に作業時間がかかるとか、自分だけでは済まない性質のもので、他人を巻き込む必要があるのだがその他人の都合がつかないとか、都合も何も他人に頼むような期限ではなくなってしまっているとか。

これは厳に慎むべきで、仕事量が増えてくれば増えてくるほど、受け取ったときの処置が重要になってくる。

諸般の事情でどんどんリソースが厳しくなってくる中、自戒をこめて、思ったことだった。

それにしても、渉外は厳しいな。誰かちゃんと指導してやれよ〜、と思う。実務的な指導は実務のできる人が傍らにいてしくじったときに完全カバーできる体制を敷いてやらないと難しいと思うんだけどねぇ。やっぱり拠点が離れているのは痛い。隣にいればどれだけでも口を出すものを。