知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

知的財産契約と税務

知的財産協会から資料第423号として発行された標題の印刷物を読んだ。ライセンス委員会が2年かけて改訂に取り組んだ力作である。

委員長の「発刊にあたって」の中に書かれている 

知的財産部門等で技術契約の対応をしていると、頻繁に耳に入ってくるようになった言葉がある。例えば源泉課税、移転価格税制、租税条約、PE課税、消費税率の改正...
正直なところ、知的財産部門は税金は素人なのだから、税金のことは財務部門で考えて、具体的な指摘してもらえないか...と言いたくなるのだが、財務部門にそう言うと、技術取引等に関する契約はよく解らない、と答えが返ってくることがある。そのような経験を私もしているし、周りでも聞く。
もしかすると、知的財産部門等の契約担当者の悩みの種の一つになっていないだろうか。

というのが、正にその通りで、経理財務部門に言われて租税条約やら通達やら伏魔殿ではないかと思いながら調べまくって前へ進むということを何度も経験している。

本資料は、従前の『ライセンス契約と税金(資料第222号)』の改訂増補版ということなのだが、この第222号の発行が平成6年。道理で、初職時代にこのあたりと格闘していた頃(消費税の導入時とか)にみた覚えがないはずで、ちょうどその頃ライセンス実務を離れて出願にシフトしたのだった、と思い出したりもした。

そして、「知的財産部門等の契約担当者自身が作った、自分たちが欲しかった契約担当者用の税務マニュアル」と言われるだけのことはあり、網羅的に関係しそうな税務について述べられているとともに、直接は関係しないけれども全体感を得るために必要なる点(例えば法人税の概要とか)についてもしっかり述べられていて、迷子にならないような解説になっている。また、関係法令や通達自体も資料集として冊子の半分以上を占めている充実ぶり。

しばらくの間(大きな改正があるまでの間?)はこれをレファ本として担当者の手元に置いておけば安心の一冊である。残念ながら会員(賛助会員を含む)でないと入手できないものであるけれども。