知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

嫡出/非嫡出

9月4日に最高裁決定が出て、民法900条4号ただし書の関係部分が違憲と判断された。ようやくという感も強いけど、ついに出された違憲判断であり、遡及効についても丁寧に書かれていることもあって、各方面で取り上げられている。

第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

私自身は、法的側面について特に言いたいことはないのだが、息子たちがここでいう『嫡出でない子』の身分であるため、関連して思ったことを書き付けておこうと思う。

何度かこのブログでも書いているとおり、夫婦別姓のために事実婚である。子どもたちも兄弟別姓なのだが、どちらも法的な婚姻中に生まれた子ではないため、婚外子、非嫡出子という扱いになっている。

上記の非嫡出子差別は、嫡出子と非嫡出子の両方が存在して初めて発動されるので、事実婚をずっと継続していて子どもが複数いたところで、両方が非嫡出子であるわけだから、特に関係はない。

あれ?そういえば、私も当初3年くらい法律婚をしていたことがあるけれど、もしその間に1号が生まれていてその後(ペーパー離婚後)2号が生まれてたら、1号は嫡出子で2号は非嫡出子だよね。その場合も2分の1になるのか?なんか変なの。ま、そんな言葉遊びのようなことは置いておいて。

事実婚をしていて、法律婚をすべきというプレッシャーは以前よりずいぶん緩くなったとはいえ、それなりにかかるわけだが、それでも夫婦だけの時代はさほど強くはない。子どもができるとなるとなぜか『法律婚をしていないと差別されるから!子どもが可哀想でしょ!』とえらく強いプレッシャーがかけられることが多い。そこで迷って婚姻届を出される方もあるようだし、嫡出の身分だけは子どもに与えておいた方がいいかもしれないということでか出生前に婚姻届を出して出生後にペーパー離婚する方もあるようだ。

といっても、上に書いたとおり、重婚状態でなければ嫡出かどうかで差が出ることはない。そのために、ペーパー離婚・再婚を繰り返すのもなんとも面倒だし、便宜的にも程がある?という気もしたので、自分たちの場合は婚姻届ではなくて、認知と子の氏の変更許可(2号の場合)という方法をとった。

息子1号の時は何しろ初めてのことだし、妊娠してからカナダに転居というタイミングだったので色々緊張しもしたし慎重にもなったので、日本を出る前に転居前の役所に行って『胎児認知』というのをやってみた。おそらくケースとして稀少なのだろう、係の方も慣れてなくてなんだか手間取った覚えがあるが、とりあえず無事受理されて、これで万一のことがあっても父親不明にはならないぞ!などと思ったりした。が、出産後、日本領事館への出生届は国内であれば2週間のところ、在外者の場合は3ヶ月と余裕があるので、自分で出向けないということもなく、息子を連れて3人で届に出向いたような気がする。

息子2号の時は、ずっと在カナダであったし、2度目で多少の慣れもあったので、胎児の間に認知まではよかろうということになり、出生届と同時に認知届も出した気がする。ただ、二人いるなら姓は一人ずつにしようと話し合い、1号の時は簡単な?私の姓のままということにしたので、2号は夫の姓にすることにした。

となると、婚姻届を出さないのであれば、家庭裁判所の許可を持って夫の戸籍に移す必要がある。在外邦人を管轄する家庭裁判所は東京家庭裁判所だということで、東京家庭裁判所に郵送で許可の申立をした。事情説明書も添付した気がする。東京ということでケースも多いだろうから慣れているせいか、特に問題なく許可が出たと記憶している(電話で問い合わせがあったようななかったような・・・おぼろげ)。

ということで、許可をもって夫の戸籍に2号を入籍させて兄弟別姓完了。

但し、氏の変更と親権者は連動するわけではなく、離婚届を出したわけではないので親権者を選択する機会がなくて、結局現在に至るまで子どもたちは二人とも親権者は私のままである。法定代理人として振る舞わなければならない局面って多分今までパスポートの署名くらいではなかったかと思うくらいで、日常生活をしていて特にこれに不便を感じたことはない。

そのあたりのことは、最近電子書籍として出版されたこちらの本に詳しい。(私が色々悪戦苦闘していた当時も類書はあったが既に絶版)

こちらによると、確かに事実婚の子どもたちが非嫡出子であってもそのまま良好な婚姻状態が継続していれば問題はないが、関係が悪化して離婚状態にいたり、その後一方が法律婚をして子どもをもうけると、相続差別の問題は表出する、とあって、そりゃ確かにそうだ、と思ったのだった。要するにうまくいっているときは特に問題がないってだけということなんだよね。

ということで、はやく違憲状態は立法で解消されることを望みます。