知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

最強の仲間とともに

息子2号に「おかあさん遊びすぎ!」とか言われつつ、先週末も2週連続で大人の遠足へ。

今回は、2年前に某所の委員会で同じテーマを1年間議論して濃密な時間を一緒に過ごした仲間による「打ち上げ」遠足である。残念ながら11名全員は揃わなかったけれど、それでも9人。前にも一緒に合宿した伊勢志摩方面へ向かった(今度は委員会じゃないから完全土日だし、宿も違うけど)。

前週の弁理士関係の旅行会は、参加の意義はともかく旅行自体の出来は残念なところが多かったのだけれど、今回は企画の段階から練られているし、なにしろ活動を通じて計画・手配・当日その場の臨機応変な意思決定と行動力が粒ぞろいであることが分かっているのでもう楽しみで楽しみで。

そして、期待を裏切らない大変充実した2日間だった。観光特急「しまかぜ」に始まって、ジャンボタクシーを使った観光、宿の桟橋での釣りとサンセットクルージング、翌日の伊勢神宮パワースポット巡りまで、好天(と猛暑)に恵まれて、楽しかったこと。「これでまた来週からがんばれるよね〜」と口々に。

委員会活動も長くやっていると、その年その年でメンバー構成は違っていて、雰囲気も色々。議論するのが得意な方もそうでもない方もあるし、正直「お客さん」になってしまって貢献が低いんじゃないの?という場合もなきにしもあらず。なかなか全員がアクティブに参加するというわけにはいかないのが実情。

そんな中で、この年のメンバーは本当に参加の度合いが高く、色々な意見が出て発散と収束とを繰り返し、まとめにはその分時間がかかったけど、みんなで作り上げた実感が得られた1年間だった。誰かからアイデアが出る、それに呼応する発展が他のメンバーから出る、議論する、方向付けをする、まとめる、というのが自然にできるので、無理矢理誰かがリードしなくて良いというのは大変快適な経験だった。

そして、今回のような小旅行にもその強力さは遺憾なく発揮されていて、企画段階のメールベースからそうだったのだけれど、現地でも同様で、その場の状況で誰かから案の候補が出るとすかさず賛否が出て即座に意思決定されて行動に結びつくので効率が良いというかなんというかとても速い。

私自身もそれほど行動がのろい方だとは思わないのだけれど、このメンバーと動いていると置いて行かれそうになるのだった。

ここまで強力なメンバーにはそうそう恵まれないことはメンバー全員が承知しているので、今回もたいそう盛り上がり、とある方の転機の発表があったことももあり、来年また再会を約して終了したのだった。

嗚呼楽しかった。

しかし、楽しすぎて1日目に飲み過ぎて潰れてしまったのは猛省・・。記憶がないのだけれど、相当説教酒になっていたようである。すみませんすみません。夫には「外でやらかさないように」と叱られて同僚には「いい年なんだから大人になりましょうね」と諭されたのでありました。ワインには気をつけます。「違った一面が見られて大変興味深かったです」と言って頂いた同行者、大人な発言をありがとうございます。。。

おかげでパワースポット巡りは二日酔いで(おまけに35度とかだし)、楽しいけど多少辛かったです。はい。

できたこととできていないこと

ゴール設定を振り返る

3月にスピードハック研究会を始めたときのゴール設定では、「資料を探さなくてもすぐに取り出せる状態になっている」ということを掲げた。色々なことを一度に始めたこともあって、こちらのゴールを意識することが多くなかった(毎日日記に掲げていたにもかかわらず)ため、達成度は心許ない。とはいえ、3ヶ月経ったので、状況を整理しておこうと思う。

ゴール設定のときに、探し物をしなくても良いとか、色々用語を考えた挙句、どうとでも取れるような「資料」という用語を選んだのだけれど、ここまで走って来て思うことには、この「資料」には、「情報」と「実体のあるモノ」の両方が含まれる、ということ。そして、ゴールを設定した時点の私の状態というのは、そのどちらも整理の状態がカオスになっていて、必要になるたびに再度探す、それを延々繰り返す、というていたらくだった。

情報を探さなくても取り出せるシステム作り

そこで、まず手をつけたのは、「情報」の方。日々の流れを整えて、受け皿をつくり、探さなくても取り出せるシステムを作る、ということ。

Evernoteの利用

具体的には、必要になる都度何度も同じ検索を実行するのを辞めて、有用そうな情報を見つけたらEvernoteにクリッピングする、クリッピングしたものは、翌日のレビュー時間にInBoxを整理することで確認し、適切なノートブックに入れる。そのとき実行しているプロジェクトの関連資料は、それ用のノートブックを用意してそこに固める、終了したらノートブックは開放してアーカイブに回す(といってもまだ日が浅いのでそこまでやったものは余りない。ノートブックに替えてタグを着けているという方が多いので、そうするのがいいのかもしれないが、なにしろタグがまったく使えるような状態になっていない)。

メールで届いた情報も、コピーしてEvernoteのノートにしてしまい、添付ファイルはGoogleドライブにそのまま入れておいて自宅PCからEvernoteに貼り付ける。

必要になったときにはまずEvernoteを見に行く。まだまだ数が少ないのでどこに格納したか覚えていることもあるし、そうでないときもピンポイントの用語で検索できる。Evernoteだけ見るのでは足らなかったり見にくかったりすることもあるのだが、それだけ見なければいけないわけでもないので、必要に応じてノートから元のサイトを見に行ったりしている。

参照資料はカレンダーへ集約

また、会議の案内、地図、経路検索などの参照資料は、カレンダーの予定の説明に集約し、そこから地図は呼び出して見られるように。出張時に紙を印刷して持ち歩かないようにしている。これは練習中で、iPhoneの地図を見ながら歩くというのがどうにも慣れなくて、迷うこといっぱい、なんだけれども、おそらく時間の問題だろうとは思っている(一番困るのが駅を出るときで、どの出口から出たらいいのかの案内がないため、表に出るまでにウロウロしてしまう)。

フローの情報からストックの情報へ

こうした流れが概ね起動に乗ったので、現在進行中のプロジェクトについては、「情報」についての探し物は圧倒的に少なくなってずいぶん快適に行動できるようになった。

これは、言うなればフローの情報の取り扱いの話である。これまで蓄積して来たストックの情報についても同様の動きができるようになれば、快適さは一挙に増すし、ほぼ探し物はしなくて済むようになるのだが、それには少なくとも自室にある紙の状態の「情報」たちを取り込む必要があり、ここから書籍を除くとしても、なんとも気が遠くなるような道のりである。よってここはどのようにするかも含めてまだ手付かずのまま。

実体のあるモノ

一方で、「実体のあるモノ」については、物理的な存在があるために、その居場所を確保してケアをしなくてはならず、これを「情報」と同様にフローだけ抜き出してシステムを作るということが難しい。ストックの上に暮らしているということになるのだろう。

とはいえ、いつのまにかストックの下の方はよく見えなくなってしまい、上澄みだけで暮らしているような気もしないでもなく、だから頻度の低いものは出てこないし、失せものはなかなか見つからない(1ヶ月以上前に自宅でなくした腕時計が未だに出てこず、スマホで代用している)。

こちらについては、断捨離の手順のように、手をつける一角を決めて順々に粛々とやっていき、システムを作り上げる、そしてメンテナンスをする、という気の遠くなるような大きなプロジェクトにならざるを得ず、少しも進められていない。プロジェクトに使える一日の時間って、最大でも3時間程度で、うっかり残業するとすぐに吹き飛ぶし、読んでおきたい文献とか書かねばならない原稿とかを抱えているとしばらくそれにかかり切りになってしまう。ひとまず現在抱えている原稿を6月半ばまでに上げないことにはなにも取りかかれない現状なのである。

プロジェクトの待ち行列

そして、このゴールとは別に、システムとして動かしたいプロジェクトはあといくつかあって、待ち行列に並んでいるところ。決してSomedayプロジェクトではないと信じたいんだけど、扱いがどうもそうなっているなぁ。。。

チェックリストの効用

3ヶ月間を振り返る

スピードハック研究会の3ヶ月が終了した。あっという間という気もするし、思えば遠くへ来たもんだ、という気もする。

ありがちなことではあるけど、最初の1ヶ月ちょっとはずいぶんドライブがかかって大きな変化を生じさせることができたが、後半に行くに従って、歩みがなだらかになった。ずっとトップギアで走ることはできないので当然ではあるのだが、最後の課題が出せなかったとか、日記が続かなくなってきたというのは多少残念ではある。

脇目も振らずにトップギアで走る状態が続かなくなった、というそれ自体の事情に加え、ここ1ヶ月ほどは、インプット・アウトプット系のタスクが集中し、さらにここ半月ほどは会社の仕事上で責任範囲が重畳されるなどの状況が重なっており、おそらくこれまでだったら余裕がなくなってタスク管理自体も停止してしまったのではないかと思われるような状況だった。

朝のレシピに助けられて行動する

ここで幸いだったのは、何度か記事にもしたけれど、オンライン受講を通じて自分で作ったチェックリストが大きな効果を発揮しているということ。特に、朝の行動レシピの果たしている働きはとても大きい。

といっても、そんな大したものは作っていなくて、朝の動線を考慮して目覚めてから出発するまでのあれこれを順番にチェックボックスをつけた形で並べているだけである。ちなみにEvernoteのチェックボックスを使っていて、朝寝ぼけた頭でiPhoneのSmartEverから起動してノロノロとチェックを入れつつ行動する。毎日できたかどうかをフィードバックする必要性は感じていないので、終わったらノートはSmartEver上でキャンセルしてしまい、チェックは消えてまた翌日使えるようになる。

低血圧のせいなのか、朝はとても弱い。でも、これに従って粛々とこなすことくらいはできる。そして、毎日やっているし、これに従って動いてさえいれば、間違いがないということが証明されているので安心して任せておくことができる。ちなみに、前日のうちに着替えとか鞄とかの用意はしておくことにしているのだが、眠くて倒れるようにして眠ってしまうことも結構な頻度で起こるので、朝の行動レシピから明日の用意のレシピもリンクですぐ呼び出せるようにしてあって、これがまたかなり効果高い。

ということで、チェックリストのおかげで、朝を毎日巡航速度で始めることができ、その中で前日の行動レビューとか、執筆時間とかも取ることができている。そうして、ここまでやってから出勤すれば、既に相当の達成感が得られるので、会社にいかに憂鬱な仕事が待っていたとしても、うっかり家で会社のメールを開けてしまってそれがまたも訴訟されましたなどという縁起でもないお知らせだったとしても、あまり出鼻を挫かれる感に襲われることがない。

行動そのものの成果に加えて、こうした心の平穏が得られる効果というのは地味にとても大きいな、と思っている昨今である。

職業人としての自分のコア

弁理士の会派の旅行会に参加した

週末は、弁理士の会派の旅行会で温泉に行ってきた。

会派、というのは、ムラとか派閥とか揶揄気味に言われたりするけど、私の理解では、意見を相当程度同じくする同士が集まって弁理士会にその意見を述べたり、役員選挙の母体になったりするための任意団体、というところだろうか。委員会の委員の推薦もしていて、その昔は公募というのがほとんどなかったので、ほぼ会派の推薦で人事が回る、という感じだったが、現在では、無所属の会員も多いので、かなり様相は変わっている。

で、活動の基礎として、研修会や交流イベントも当然色々行われており、年1度の旅行会は交流イベントの中でも一番大きいものの1つになる。

今回の参加者は50人弱で、これが全体の規模感からすると多いのか少ないのか不明だが、傾向としては、種々の役職を経験された/現在その役をされているベテランが多く、若手は少ない。個人が自腹で出すには値段も高いし。ちなみに、企業弁理士は会派に入っているわりあいが(当然ながら)低い。情報のルートとしては既にさほど重要でもなくなっているし、知財協会経由の情報で十分事足りる、ということもあり、さらに、会派のための会費というのも事務所と違って経費にしてもらうわけにもいかないので痛いという事情もある。

私自身は、とくに深い考えもなく合格・登録当時に誘われていまの会派に入って以来なんとなくそのまま薄く緩くつながっている状態が続いていて、だから旅行会に行ったのも20年で2度目という。

自分にとって大切なこと

今回特に誘われたわけでもなく参加を決めた理由は、このところつらつらと「自分にとって大切なこと」を考えていて、その第一の柱が『プロフェッショナルであること』だと再認識したのだけれど、そのコアの部分は、さらに3つの柱で構成されているのではないかと思い至ったことに起因している。
こんな感じ。

で、その時の自分の仕事の状況によって、円の大小とか濃さ?とかにどうしても差が出てくるのだけど、できればどれも同じ大きさになるようにしていた方が好ましいと思うわけ。例えば、特許事務所にいた頃は、もちろんリアルタイムに『企業人』ではないので、ここはそれまでの経験と外部ソースからの情報と経験で補うしかなかったし、さらに『知財渉外』部分も仕事の依頼はほぼゼロに等しかったので、その部分のスキルをアップデートするためにかなり気を遣っていた。

現在は逆で、ほかっておいても『知財渉外』はふくれあがるし、マネジャであることで『企業人』部分も大きくなる傾向にある。逆に、特に困らないので放置すると『弁理士』であることは忘れそうになる(汗)。

ということで、意識的に、弁理士としての活動は確保していきたいし、弁理士サイドの交流も活性化しておきたいという気持ちがあって、今回の参加に繋がっている。

宿がかなり残念だったとかいうことはあったけれど、それは脇に置くとして、日頃あまりコミュニケーションを取ることの少ない先生方とフランクに話すことができて収穫は確かにあった。今後も(旅行会かどうかは別として)各種の活動には参加していきたいし、弁理士(会)の在り方も自分なりにちゃんと考えていきたい、と改めて思ったことだった。

カレンダーが3つ

※最近、とある原稿書きに追われていて、ブログのエントリまで手が回りません。。雑記でない執筆系は1日1つが限界っぽい。

さて、予定の管理をどうするのか、という話題はときどき盛り上がるものの1つだけれども、私自身の現在のやりかたについてまとめておく。スケジューラは、現在3つ使っていて、

(1)アクションプランナー
(2)サイボウズガルーン
(3)Googleカレンダー

(1)については、これまで何度か書いているけれど、もう7〜8年?使っているアナログの手帳で、1週間見開きヴァーティカルタイプ。

(2)は、会社で使っているグループウェア。会議の予定など、社内で共有すべき予定が中心で、会議室の設備予約と連動するため、主催者から入れられる予定になるし、自分の予定をここにきっちり入れて、周りから空き時間が分かるようにしておく必要がある。

(3)は、以前はプライベートの予定や家族共有のためだけに使っていたのだけれど、タスク管理を始めてから時間割を作るために使い出し、今ではルーチンタスクの時間や移動時間も全部ここに入れるようにしている、メインのスケジューラである。このカレンダー上に入っていないのはプロジェクトスロットだけ。

スケジューラ3つの運用状態を見直す

スマートフォンからGoogleカレンダー(3)が閲覧も入力もできるようになって久しいので、アナログの手帳(1)は要らないかとも思ったのだけれど、決めかねてずるずる全部使っていると言う状態が続いていたのがここ数年。

あまりきちんと考えてこなかったので、3つのカレンダーが完全に同期されていなくて、こっちには入っているけれどあっちに入っていない、予定が流入してくる場で開くスケジューラによってそこに予定があるかどうかが見えたり見えなかったりするということが頻発し、ダブルブッキングが起こったりして地味にストレスになっていた。

そこで、この際、アナログの廃止も含めて、どう管理するかをきっちり考えることにした。

見直しの結果、完全同期で3つを運用

結果、結論としては、全部残す、但し、完全に同期するシステムも導入して、ストレスフリーにする。

3つ並行する&完全同期する理由

(2)のグループウェアは、社内共有上登録が必須で止められないし、ここに全ての予定が入っていて、空き時間には会議等の予定を入れてもらって構わない、と公言しておくと、いちいち予定を確認されなくなるので、周りも自分も幸せ。だから、出張や外出の予定は、前後の移動時間もきっちり入れておく。

予定が入ってくるパターン

予定の流入バリエーションとして、(2)グループウェアに直接来るものの他、電話や打合せ、面談などの席上で口頭で入って来るパターン、メールで入って来るパターン、学校予定や演奏会チケットのように書類で入って来るパターンが考えられる。

口頭流入予定をデジタル入力するのが難しい

このうち、口頭流入の予定を直接Googleカレンダーにその場で入力すると、これまでの経験上、アナログより時間がかかり、かつ、失敗する可能性がある(別の日や時間に入れてしまう等)。そして、口頭だからこそ、その予定の根拠になる証憑類がないので、本当にそこに予定が存在するのかとても不安になることがある。まあこれは、私がスマホでの入力になれていないせいも大きいのだけれど、その場でカレンダーを立ち上げて、うまくその時間帯をタップしてさらに入力する、というのはそれだけでストレスフルなのだ。

アナログの有利さ

口頭流入の場合が一定量あることを考えると、アナログのスケジューラはあった方がよい、という結論になった。その場で手帳を開いて記入すればすぐに済むし、日付や時間の取り違えもほぼ起こらない。ついでにどういう経緯でその予定が入ったかもメモすることも造作ない。

今後の運用方法

ということで、残すと決めてからのやり方としては、
(a)予定が入ってきたら、まず、アナログの手帳に書く。そして、同期前という印をつけておく。これは、どんな手段で流入してくる場合も(グループウェアに直接の場合でも)、まず手帳に書くのを原則とする。そして、月次の一覧(Project at a glance)の方に、未同期の予定が入った日に印をつけておく。

(b)毎朝始業前にカレンダー同期の時間を作り、手帳の月次一覧をまずチェックする。未同期マークが入っている場合は、その日のページを見に行って、Googleカレンダーとグループウェアに同じ予定を入れる。同期が済んだら、手帳の未同期マークにチェックマークを入れる。

非公開予定の活用も

なお、グループウェアでのプライベートの予定の取り扱いは、平日夜については移動時間を含めて非公開予定として登録しておく。こうすることで、定時後に会議を入れられたり、相談に来られたりということを避けることができる。グループウェアは、周囲に知ってもらいたいことを入れておく場所、という位置づけなので、それに必要十分な程度で。なので、週末の予定は入れないし、有休のときもその旨の表示のみ。

ストレスフリーなスケジューラ運用

と、こんな感じで完全同期することを旨として動き出してみたら、安心感がぐっと増してストレスが激減した。もっと早くするんだった。とはいえ、初回の同期には相当の時間がかかりました。同期ってでもそういうものだよね。

こんな感じで、しばらくは行きそうです。

ルールに沿って動けるシステムを作る

アナログの時代の準備と整理

その昔は、自分でも用意周到な方だったと記憶している。その場になってからアドリブでなんとかする、というのが苦手で、取り返しがつかない事態になることに対する恐怖から、相当早くから準備しないと落ち着かなかった。

書類が仕事の中心だった頃は、紙を紛失すれば終わりなわけだから、きっちり分類し、インデックスをつけて整理し、保管していた。職場の書類も、自分の机も、自宅の書類もそのようにしていた。それなりにそこに時間はかかっていたわけだけれど、当時はここまで世の中のスピードが速くなかったし、取り扱う書類の量もそこまでではなかったのでなんとかなっていた、ということもあるのだろう。

事前準備しなくても差し支えない?

おそらく、Googleが登場し、Gmailが万人に利用できるようになってから、周到に準備しなくても、必要になってから検索すればなんとかなってしまうというのが徐々に浸透し、常態になり、携帯電話やスマートフォンがこれに拍車をかけた。自分自身の経験値が上がり、引き出しも増えてその場で考えてもしのげることが増えてきたこともある。事前に準備するのと同等の結果がその場で得られるのであれば、特に事前準備する必要などないではないか?

というように明確に決意したわけではないが、いつのまにか事前準備というのは、軽く検索しておくとか、大体のあたりをつけて一応の安心感を得ておく、という程度にとどまるようになり、ぶっつけ本番の割合も増えて行った。取り扱う仕事や家事の量が増えて同じように処理することができなくなってしまった、という状況の変化もあったと思う。

事前準備しなければ行き当たりばったりになる

こういうものは全般に伝染するらしく、資料の整理や予定行動の用意だけでなく、仕事全般・私生活全般が「事前に考えて整える」ことをしなくなり、徐々に「行き当たりばったり」が増えて行った。「エントロピーは増大する」のである。

ここから抜け出すのは容易ではない。行き当たったときにその場で判断をする、ということは、十分に時間をかけて検討することができないだけでなく、事前のときよりも選択肢が限られる、ということを意味するので、その場その場の判断の積み重ねがほとんど何も生み出さない。同じようなことについてその都度答えが違っていたり、後から振り返ると『なんでこんなことをしたのだろう』と思うような行動をとっていたりすることも頻繁にあったが、そのフィードバックがかかることはなく(忘れてしまうことが多いし、思い出したときには既に選択肢の中に入れられない状況のことが多い)、同じような失敗を繰り返す頻度が増えていた。

こんな状況になっていることに無自覚なわけでもなかったのだが、改めようと思うと全体のシステムを見直して、かつ、今後だけではなくてその時点のストックの状況を変えないといけないので、ほとんど諦めていた。(こうして書いてみると、なんて生産性が低いんだ>自分)

『考える』ことと『実行する』ことを分ける

で、本題(前置き長いし)。

スピードハック研究会では、『考える』ことと『実行する』ことを分けることが推奨される(例えば、シゴタノ!のこの記事を参照)。以前のエントリで書いた、朝の動線を予め考えてレシピ(手順書)にし、それに沿って動く、というのもこの1つ。

いつもの行動を増やす

他にも、宿泊出張で帰りの新幹線が取れなくてorzという話の後、事前に行動計画を立てておいて、それを記録しておこうとしたところ、出張はパターンをいくつか決めておき、それに沿って予約をするようにしたら楽ですよ、というアドバイスを頂いた。固定できるところは固定してしまうと、『いつもの行動』が増えるので、「あれ、今日はどっちだっけ?何分だっけ?」などと考えたり確認したりする必要がなくなる。

確認行為はリソースを喰う

実は心配性なところはあまり昔と変わっていないので、こういう確認行為が地味に多くてけっこうリソースを消費しているし、予約の時にも「何時に出よう」から考え出すと判断の選択肢が多くて迷うため、そこでもリソースが消費されている。そこで、毎回のパターンをせいぜい2つくらいに絞って最適・次善と思われる行動計画セットに作り込んでおけば、実行フェーズでは何も考えなくて済むのでとても楽になる、という案配。

「リソースを消費している」と書いたけれど、あまりにもこういう行動が多かったため、それが通常になってしまっていて、パターンを固定して実行するということを2〜3回やってみて、いままでいかに無駄にリソースを消費(というか浪費だね)していたかに気がついた、という話である。

事前に考えれば練ることができる

最適な行動を作るために、何時の新幹線が良いだろうか、そのためには最寄り駅の電車が何時で、家を何時に出て、さらにその日の朝の行動はどうなって、と考える。シミュレーションを繰り返して考えたため、そこには結構な時間がかかったけれど、その場の思いつきでなくちゃんと考えただけあって、それなりに練られたものになっていて、当初からわりあい快適に過ごすことが出来、実行しての気づきを入れてさらにチューンしたりしている。

気づきを拾い上げる仕組み

こうした事前の準備レシピとその使い回し、というのは典型的だけれど、そのほかにも、「あ、これ、ちゃんと考えておきたいな」と思うことはしばしばあり、これまでは、そういった思いつきを拾い上げる仕組みがなかったので、そのまま放置され忘れ去られていたのだけれど(たまに運良く覚えていたものがブログのネタになっていたりしたくらい)、今は、TaskChuteのコメント欄に書いたり、プロジェクト・ノートに書いたり、日記(これもSH研の課題なので毎日テンプレートに沿って書いている)に書いたりして、これらはほぼEvernoteに集約される(会社のプロジェクト・ノートを除く)。

このため、毎朝EvernoteのInBoxを空にするときに、「時間を取って考えたいこと」は、タイトルに「考える」とつけて、別のノートを作り、「考えていること」というノートブックに入れるようにしている。そして、考えた結果物は、「レシピ」や「チェックリスト」、または「ルール」といった「参照資料」スタックのノートブックに入っていく。

ここも循環で、思いついて拾い上げる仕組みがあると分かっていれば、メモを取るようになり、さらに、TaskChuteから離れている時になにか「考えたいこと」を思いついたときには、直接Evernoteにメモを投げる、という行動が取れるようになる。これも、カオスだったEvernoteをなんとか整理して、Activeというスタックを作り、そこに「考えていること」や「作業中」や「調べる・読むこと」のノートブックを作って巡回するようにした頃から回り出した。

当初からこの3つのノートブックを作っていたわけではなくて、巡回しているうちに、その場で全部が考えられないので、pendingのノートを入れる置き場所が欲しくなり、Activeノートブックを作って放り込んでいたところ、雑然としてきたので、今は上記の三種にひとまず分けて入れてみている。

考える仕組み

初めのうちは、InBoxを空にするついでにActiveスタックのノートブック内のノートを巡回して、考えて完成し、「参照資料」側に移していたのだけれど、最近考えたいことがどんどん増えてきて、処理しきれなくなっている感がある。そして、処理し切れていないものだから、同じことを思いついて別のノートに同じ趣旨のことが書かれていてEvernoteに「関連するノート」とか指摘されて「あれ?」となったり。そろそろ、朝のレビュータイムの中には収まり切らなくなっているので、別に時間を取る必要がありそうだ。

こうして「考えて作った」参照資料は、レシピやチェックリストは必要な都度使うし、自分で決めたルールは、時々ノートブックを読み返して思い出すようにしている。これも、プロジェクト・ノートと同じで、どうしてそのルールを作ったのか、という理由や思いをきっちり書くようにしているので、読み返すと「ああそうだった」となってルールに沿った行動が取りやすくなる効果がある。そして、時間をおいて読み返すと、「これはちょっと違うかも」ということも出てきたりして、そうすると、日付を入れて修正してみたりもする。

まだ作り始めてからそれほど時間が経っていないので、あまりできていないのだけれど、レシピなんかも作ったまま放置していては使えなくなってくる(実情に合わないところが増えて見なくなってしまう)ので、これも実施するときのフィードバックだけじゃなくて、改めて読み返してじっくり考えることもやっていきたい。うーん、色々時間がかかるなぁ。

というわけで、なんだか最近とても「ものを考えるようになった」と実感しているのだった。

RAND宣言違反についての控訴管轄はCAFCでなく第9巡回区(Microsoft v. Motorola)

Microsoft v. Motorolaの控訴

The Essential Patent Blogの記事に、MotorolaのRAND義務(ITU H.264とIEEE 802.11の必須特許)違反を巡ってMotorolaとMicrosoftが争っているケース(ワシントン西部地裁:Robart判事)について、MotorolaがCAFCに控訴していたところ、Microsoftが第9巡回区への移送を申し立て、CAFCがこれを認めた、ということが書かれている。

このケース自体、アメリカとドイツで裁判をやっていて、それもドイツで差止判決を得たものがアメリカでは認められなかったりして大変ややこしいのだが、それについては、引用元を参照して頂きたい。大変よく整理されていてありがたいばかり。

RANDのRoyalty計算

ワシントン西部地裁へそもそもMicrosoftが訴えたのは、Motorolaの提示したRoyaltyがRAND義務を負っているものなのに高すぎるからRAND義務違反、というものだったため、では、RANDのRoyaltyはいくらが妥当なのか?という判断が要求され、それについてRobart判事が判決を書いており、これがRAND royalty rateについての初の判断になった(引用元の参照記事から判決文(order)自体を読むことができる。但し、207頁ある超大作)。

その後、陪審によるtrialが行われ、MotorolaのRAND義務違反が認定され、かつそれが不当だというMotorolaの申し立ても却下されている(詳細は、こちらの記事。この中に、Robart判事の陪審員への説示が引用されていて興味深い。)。この申し立て却下に対して、MotorolaがCAFCに控訴を申請していた、という構図である。

昨年あたりからRANDを巡っては、世界的に旬になってきていて、日本でも知財高裁の大合議にかかったりしているわけだけれど、アメリカでも幾つか裁判になっている。これについても、引用元記事にわかりやすくまとめられているが、一応ここでも上げておく。リンク先は、いずれもThe Essential Patent Blogの関係記事。

1)本件 Microsoft v. Motorola (ワシントン西部)
2)Innovatio ケース (イリノイ北部)
3)Realtek v. LSI (カリフォルニア北部)
4) Ericsson v. D-Link (テキサス東部)

まだどれも確定しておらず、控訴審の判断が出ているケースもない。上記2)のInnovatioケースは、どうやら和解に進みそうな様子で、控訴審へは進みそうにないとのこと(既にCiscoが和解で決着している)。3)のRealtekケースは、第9巡回区へ控訴中。4)のEricssonケースは、CAFCに控訴中。本件は上述の通り、CAFCじゃなくて通常の巡回区に回ることになった。  

引用元記事に述べられている通り、損賠賠償については通常は陪審マターなので、その算定プロセスは表にでて来なくて、金額だけが結論として示されるため、再現性がないというか、あまり後あとの参考にしにくいという性質がある。その点、本件は、陪審ではなくてbench trialのため、詳細にそのロジックが判決に書かれていてとても興味深い。ただ、多少残念なことに、この上訴先がCAFCじゃなくて通常の巡回区に行ってしまったため、控訴審でどのような結果になるにせよ、地裁が示しているロジックが今後の他の管轄での裁判やCAFCでの判断に踏襲されるという可能性はかなり低くなったということらしい。