知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

渉外

ゲームのルールが明確になった後は?

アップル対サムスン事件知財高裁大合議判決評釈など アップル対サムスン事件の知財高裁大合議判決は、それはもうあちこちで取り上げられていて、既にかなりお腹いっぱい感がある。1つ前のエントリにも書いたように、昨日届いたLaw & Technology 65号には、名…

天職の現場

知財法務/知財渉外を中心に据えた企業知財が自分にとって天職、ということはなんどかこちらでも書いてきたように思う。 属否判定が好き その中でも、特許係争における対象特許と製品の関連づけというか要するに属否の判断は、交渉の前提というか要諦というか…

FRAND条件下のロイヤリティ算定方法

アップル対サムスンの知財高裁大合議判決は、あちこちで取り上げられているが、当方の関心は、実際にどうやってロイヤリティを算定するのか、というところに集中しているので、その部分だけ覚えのために書き付けておく。金額算定の構成要素は、(1)算定基礎と…

IPRを理由にしたMotion to Stayの成功率

米国での特許侵害訴訟の対抗策としてすっかり定着したInter Partes Review。使える文献があれば、やらないという選択肢はないよね、という感じになりつつあるように思う。そして、これを理由にした訴訟の中断申立(Motion to Stay)の成功率も、かつてのreexam…

私的交渉の要諦、のようなもの

1つ前のエントリーで過去記事のリンク集のようなものを作っていて、やっぱり自分の考えを整理した記事というのは(特にそこそこ蓄積してくると)自分にとっても価値があるなぁ、と思ったりした。ということで、ここのところブログを書くシステムが崩壊してい…

RAND宣言違反についての控訴管轄はCAFCでなく第9巡回区(Microsoft v. Motorola)

Microsoft v. Motorolaの控訴 The Essential Patent Blogの記事に、MotorolaのRAND義務(ITU H.264とIEEE 802.11の必須特許)違反を巡ってMotorolaとMicrosoftが争っているケース(ワシントン西部地裁:Robart判事)について、MotorolaがCAFCに控訴していた…

戦々恐々?:Acacia Research日本進出

4/28の日経新聞記事〔有料版〕に、「日本企業の休眠特許活用 米大手、売却元に収入分配」という記事があった。記事によれば、米特許管理会社大手のアカシア・リサーチが日本企業の抱える休眠特許の活用に乗り出す。電機・通信分野を中心に使われていない特許…

被疑製品の侵害主張は準拠規格との比較で行ってもよいが、被疑製品の特定自体を「規格準拠品」で済ませてはいけない

特許侵害の充足論は、特許請求の範囲を構成要件に分説し、各要件を被疑製品が充足しているかどうかを判定するという形で行われる。これは米国でも同じことで、訴訟においては特許権者側がInfringement Contentionの中でClaim Chartを提示することによって行…

Fair and reasonable !?

特許を外部調達して権利行使をしてくるpatent assertion entities (PAEs)にもいくつかの類型があり、一極にはブームに乗って?小金を稼ごうという目的(に見える)方々がいる。この類型では、コストパフォーマンスが最大の関心事で、いかに少ない費用で濡れ手…

訴訟併合後に他の被告がかけたIPRの影響は(motion to stay)

Corporate Counselに、「Using Another's Inter Partes Patent Review Can Cost You」という記事が掲載されていた。AIA改正後、patent assertion entities (“PAEs”)に訴えられた被告側の強力な対抗手段としてすっかり定着した感のあるinter partes review (I…

パテント・トロール対策法案はもう十分?

標題はちょっと煽り気味で、そこまでの話ではないけれども、3/14のIP Watchdogの記事で、今米国議会で進んでいるパテント・トロール対策法案の必要性に疑問が呈されていた。概要としては、これ以上の改正を、今やるというのは適切ではないのではないのか、AI…

条件提示の進め方は

いつもペアで知財渉外業務を進めている同僚と話していたこと。例えば特許ライセンスや和解の交渉をしていて、互いに条件を提示しつつ妥協点を探っているような段階のときに、1ターンでどこまで踏み込むのが正解というか適切なのか。実際に交渉にはいる前に当…

『産業の発達に寄与』ってなんだろう

第一条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。言わずとしれた(って知財クラスタ限定だけど)特許法1条(目的)である。なんでいきなり目的条項、といえば、ちょっと考えさせられる…

RAND条件と差止請求権・損害賠償請求権

いまのところ意見募集に応募する予定はないんだけど、昨日のエントリを書きながらつらつら思ったこと。通常、ライセンス交渉においては、特許権者側が被疑侵害者にライセンスを取得させるための最も強力な武器は差止請求権である。交渉が決裂してなお被疑侵…

IEEEが12月20にCAFCに提出したamicus brief (Ericcson v. D-Link et al.)

1月22日に知財高裁の大合議に付されることになったアップル対サムスンの控訴審で一般から意見募集することを裁判所から双方代理人(モリソン・フォースター/伊藤 見富法律事務所、大野総合法律事務所)が促されたということで、当日は知財界隈では話題沸騰と…

最適解に近づくためにはパラメータをできるだけ漏れなく拾い出すこと

端的に言えば、知財に関して各方面から寄せられる要求に対して会社にとって最適と思われる対応を行う、というのが渉外のミッションである。そして、好むと好まざるとに関わらず(まあ好んでやっているわけだけれど)、年がら年中こんなことをやっていると、…

California caseでAppleが使った弁護士費用は$60M超らしい

FOSS PATENTS によれば、AppleはSamsungとのカリフォルニア北部地裁での侵害訴訟において、弁護士費用として15百万ドル強を請求した(2013/12/5)とのことである。FOSS PATENTSでも触れられているように、現在審議中のパテントトロール対策法案では訴訟費用の…

競合間では提訴頻度と売上規模は緩い相関がある

『今年はアメリカで○件訴えられまして、費用はこのくらいかかりました』などと報告しようものなら、それは前年までと比べてどうだったのか。 次年度以降はどうなるのか。 費用は適正だったのか。 他社はどうなんだ。という類の問いが速攻で飛んでくることは…

クロスライセンスの相手が破産したとき

The Essential Patent Blog のエントリから。Qimonda AG (独)が従前競合と結んでいた無償クロスライセンスが倒産後はドイツ倒産法により無効(というか“no longer enforceable”)とされたところ、ライセンシーは米国で米国の倒産法に基づいて(Section 365(n…

毅然とした態度で臨むことは将来の提訴リスクを減らすのか

某会合の後、有志で二次会に行って多方面に話題が飛びつつ歓談していたのだが、話が米国のパテントトロール訴訟に及んだ際、訴訟費用を惜しんですぐに和解するのではなく、ちゃんと争って無効や非侵害の結論を出すことが次のターゲットにされない効果を生む…

ちゃんと権利行使をして取り立てるのは大変です→当然

シンポジウムのために上京した際、苦手なレセプションはパスして同じ時間帯で元右腕部下だった方と久しぶりに会って飲んだ。彼は、種々の事情で2年弱前に退職し、ライセンスを事業とする会社に転職しており、いわば川を向こう側にわたってしまっていたのだが…

Discoveryの制限は現実的に可能なのか

シンポジウムの第2セッションのパネルディスカッションの中で出た話題の続き。PAE訴訟では、訴訟に係る費用が多大であることをレバレッジにしてそれよりも少し低額になる金額で和解を持ちかけるという構図がある。そして、その『訴訟にかかる費用』のうちの…

PAEなるもの

シンポジウムの第2セッションのパネルディスカッションは、2人の判事とマックルヒニー弁護士をパネリストとして行われた。マックルヒニー弁護士は、判事は雲の上の人でこんな風に同じテーブルでディスカッションするなんて初めての経験だ!などと言って会場…

District Courtからみると

シンポジウムの第2セッションその2はアルサップ判事による「米国連邦地方裁判所判事から見た特許訴訟問題」。アルサップ判事は、現在カリフォルニア北部地裁の裁判官で、15年の裁判官経験、25年の弁護士経験。裁判官として約250のケースを扱ったとのこと。…

CAFCとSupreme Court

シンポジウムの第2セッションの(1)、CAFCレーダー判事による「米国連邦巡回区控訴裁判所における近時の動向」。紹介のあった中で、あまり普段チェックしていないCAFCのサイトの中から統計情報。こちらによれば、CAFCが取り扱っているケースのうち、半分弱がI…

Inter Partes Review

シンポジウムの第1セッションその2「Inter Partes Review The First Year」。おさらいの意味で、Inter Partes Reviewを、従前のInter Partes Reexaminationや訴訟における無効主張と比べた特徴。1. Limited Duration 結論までの期間が短い Inter Partes Ree…

eBay判決後の差止めの動向

シンポジウムの第1セッションは「Recent Developments in Patent Remedies」だった。情けない話だが、eBay判決は私の中ではNPEが差し止めを得られなくなった"ありがたい"判決という程度の位置づけでしかなく、あまりちゃんと中身を検討したことがなかった。…

どの国で権利行使するか、その理由は?

秋はアンケート祭りで、色々追われながら回答していたんだけど、「権利行使態様の多様化を踏まえた特許権の効力の在り方に関する調査研究」の中で、最後にこんな質問があった。戦略的に知財侵害訴訟提起を優先する国(訴訟提起をする裁判所の所在する国)と…

「パテントトロールの最近の傾向」(個人的まとめ)

先週11/13の夜、地元の弁護士+弁理士の研究会で標題の発表を行った。この研究会に参加されているメンバーは、あまり米国でのNPE訴訟などには日頃は縁がなく、なじみがないので、概略を聞くだけでも興味深いからと言われたので、現時点での私の思っていること…

パテントトロールのビジネスモデルはそろそろ成熟期なのかも

RPXのKyoto Conferenceに行ってきた。参加はInvitationベースのようなので、詳細は記載しないけれど、普段考えていることというか、訴訟を通じて推測していることが概ね当たっていてやっぱりそうだよな、と思う反面、この規模で分かってしまうってどうなの、…