知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

インハウス・ロイヤー

10月号のBusiness Law Journalの特集は、「弁護士・法科大学院修了者の採用 企業内弁護士は大幅に増加するか」である。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2008年 10月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2008年 10月号 [雑誌]

この雑誌、企業法務に焦点を当てている珍しいアプローチでなかなかおもしろく、あちこちのブログでもよく取り上げられている。つい毎号買っているので、とうとう今月号から定期購読にした。実を言うと会社で買ってくれないかな〜と思ってうろうろしていたのだが、ちょっと予算とターゲットの問題で難しかった。って結局社内回覧してるんだけども。

現在、企業内弁護士は300人弱らしい。25,000人の総数から見ると1.2%といかにも少ないが、この3年で倍増しており、新司法試験合格者の就職難が取りざたされ、さらにコンプライアンスだ内部統制だと騒がれる現在、『大幅』かどうかはともかく増加していくことにはなるだろう。

対して、弁理士の総数は約7800人。企業勤務の弁理士は約1400人で17.5%。弁理士試験は司法試験ほどの難易度ではないから、受験浪人が少なく、働きながらの合格者が多い。中でも知財部に勤務しながら合格して登録するケースが特許事務所勤務と並んで数としては昔から多いのだと思う。司法修習のように退職を余儀なくされたりもしないので、そのまま勤務し続けるケースがほとんどではないか。

昔は社内で合格すると数年お礼奉公をして独立し、元の勤務先をクライアントに持つという形が多かったように思うが、現在は弁理士の数も激増したこともあり、そのルートがみんなが通る道だとは言えなくなっている。以前は業界内の転職も企業から特許事務所の一方通行だったものが、最近の知財強化の流れでどこの会社も人員増加、中途採用枠を増やしており、特許事務所から企業に入るケースも多くなった。かくいう私もこのパターンだが、地元でも弁理士が特許事務所から企業に入る話はちょくちょく耳にする。

企業法務部が弁護士を採用する場合、その待遇が悩ましいところのようだが、弁理士の場合、一般社員とまったく変わらないのが通常だと思う。資格手当てがつくところもないではないが、あまり多くはない。弁理士会の登録費用、会費を会社負担にしてもらうのが精々ではないか。まあ会費を自腹を切って納めるのはなかなか個人には辛いので、それだけでもありがたいといえなくはないが。

弁護士のようにプロボノ活動が義務付けられてもいないので、弁理士会の公的活動には企業勤務だと出してもらえないのが普通だと思う。会社の利益につながらないので、少なくとも勤務時間中の活動は認められず、有休をとって参加とか、週末だけ参加という形が多い。なので、弁理士会の会務には圧倒的に事務所の経営者・事務所勤務弁理士が多い。

弁理士としての外部活動を通じてネットワークもできるし専門知識も広がるし、もう少し考慮してもよいのではないかという気もしないではない。実際、今回のBusiness Law Journalでは、弁護士会での活動をそのように評価している声が多かった。しかし、知財業界にはなんといっても『日本知的財産協会』(知財協)という企業知財部門の団体があり、これが強力なのであまり弁理士の外部ネットワークには期待されていない。というか、視点が違うので役に立たないと思われている気がする。

確かに視点が違うので、どちらかというと両方に足を突っ込んでおいたほうがバランスが取れていい気もするんだが。まあ、当社は小さいこともあるし、フットワーク軽く色々首をつっこんで井の中のなんたらにならないようにしよう。