知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

ライセンス交渉

今回の米国出張のもう1つの目的は、ライセンス・オファー(ていのいい侵害警告だわね)をもらっている会社と直接面談することだった。当初から『日本に行くから会おうぜ』みたいなお手紙を何度ももらっていたのだが、直接会うのも良し悪しなので、ずるずる引き延ばしていたもの。自分のポジションが固まらないうちに特許権者さまにお会いして、その場の雰囲気に流されて言質でも取られた日には目も当てられないわけで。

もうそろそろ引き伸ばせなくなってきて、まあクレームチャートの検討も一通り終わり、無効資料調査もざっくりやって、米国代理人ともそのあたりのポジションについて電話会議をやって、と進んできたので、まあこの機会にアメリカで会ってしまおう、と急に決めたのだった。最初は翌週でどう?といわれていたのだが、そんな帰国したばかりでは準備もあんまりできないし、と渋っていたところ、ついでにアメリカでやってくればいいじゃん?と社内で焚きつけられたのだった。おかげで西から東に移動する羽目になり、エア・チケット変更し、特別予算の申請をやり直して大変面倒でした。

ということで、場所は当社代理人弁護士のオフィス(アレクサンドリア)。こちらは渉外Gから2人(って、これ以上は実務担当がいないんだが)、代理人弁護士二人(一人は特許の技術的な方面を担当している若手・一人は当社が頼んでいる訴訟チームのトップパートナー)。先方会社は、ライセンス担当副社長、特許ポートフォリオ担当マネジャ、米国のライセンス担当、米国代理人弁護士の4人。

今回初顔合わせで、これまで具体的なライセンス条件が提示されていなかったので、お互いに簡単な自己紹介の後、ライセンス・プログラムの説明。特定分野の特許群について、特定分野の製品に対するワールドワイドライセンス、5年間、過去・将来とも一定料率のロイヤルティ支払(当然過去分は締結時に一括払)、とまあ大変わかりやすいプログラム。

初顔合わせの場合、提示してきているクレームチャートについて特許権者側から具体的に説明があり、こちらが質問する、という形態もよく取られる。今回の場合、クレームチャート自体の説明は省き、こちらから何点か質問する、という形を取った。その場では回答が得られないものもあったので、後日質問を書面で出すことになった。

各所にオファーレターを出しているとのことだったが、まだ締結しているライセンシーは出ていない模様。そんなスターターパックのライセンシー予備軍に入れてもらわなくてもいいんだけどなぁ、うち。と内心思う。

いわゆるライセンス専業会社ではない事業会社からのオファーのためもあってか、比較的低レートであることは確かで、それに先方は自信を持っている様子であった(これならすぐ飲んでもらえるだろう、位の勢いで)。とはいえ、こちらとしてもそうそう金払いよくもいかないわけで、もともと違う分野の発明を当分野に無理やり持ってきているところが納得がいかないとか(クレームの文言は広いのだ、確かに)、クレームチャートを当社製品じゃなくて規格文書との比較で書くのは止めろとか、言いたいことはいろいろある。

そして、百歩譲って提示している米国特許がその通りだとしても、対応日本は同一クレームばかりじゃないじゃない?じゃあ日本分はロイヤルティは不要じゃない?あるいはもっと安いのが妥当じゃない?ということもある。

なんて主張をし、別室に分かれて双方個別協議。先方は、こちらの主張に対して本社に電話をかけて聞いてみたりしていたようだ。でも答えはNOだったけど。

もちろん1回の面談交渉で話がまとまるはずもなく、この後書面で主張をすることを約して終了。9時〜14時予定のところ、12時前に終了した。

とまあ交渉は始まったばかり。これからしばらく続きそうである。
ちなみに、先方は、今のライセンス条件でライセンスを取りたいなら、10月中に決めて11月中にサインしろと迫っていた。じょーだんでしょ。