知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

Settlement w/ NPE

米国での特許訴訟、少なくとも、当社が直面しているのは、かなりの割合がNon-Practicing Entity(非事業会社)によるものである。よく言われるパテント・トロールに相当するかどうかはともかく、研究所やら、TLOやら、大学やらも含め、自分でその事業をやっていない会社は全部これに入る。典型的なのは、発明者でもなんでもなくて、使えそうな特許を買い集めてきて、関係のありそうな会社を数十も被告に入れて訴える、というパターンである。

米国は権利行使がしやすい(よく言えば)。訴えるのに訴額に比例した手数料が要るわけではないし、訴状の記載もそれなりでよい(侵害している、といわれるだけで、どの製品なのかとうていしていないこともざらである)。これに成功報酬の弁護士がつけば、少ない資金でも訴訟をテコにしてライセンシング・ビジネス?が始められるというわけだ。

対して、被告側からすると、米国でのリーガル・コストはばか高い。Discovery制度があるし、手続重視の国なので、それに対応する弁護士費用がとてもとても高くつく。損害額が$1M〜$25M程度の訴訟で、Discoveryまで遂行すると平均して費用が$1.5M(1億5千万円)、地裁での判決まで頑張ると$2.5M(2億5千万円)。これは販売規模に比例してくれないので、大した販売額でないのに訴えられると悲惨である。

となると、和解費用やライセンス料がこれを上回らないのであれば、例え勝訴がまちがいないとしても(そして、間違いないなんてことは訴訟である限りはほとんどなくて、可能性の問題になってしまうのだし)、最後まで訴訟を遂行するのは純粋経済的に見れば意味がない。意地の問題とか、そんな特許をのさばらしておくのはけしからん!とかいう正義感だったりとか、トロールのターゲットにされないためにはやる気を見せておく必要があるとか、何らかの度外視した理由が必要になる。
※こういう事情がNPE活動を助長してしまう、ということはあるのだが、一企業からすると合理的な行動は、マクロ的に非合理というわけで、そこは政策的になんとかして欲しいものである。

ということは、あまり訴訟を継続する気がないのであれば、とっとといくらかの金を支払って和解してしまった方がよいわけだ。そして、その金額は少なければ少ないほどいいし、そこまでにつぎ込むリソースも少ない方がよい。そこで、NPEから訴えられたときに早期に低額で和解するコツ?

(1)他の被告に先駆けて和解をもちかける
(2)非侵害・無効のポジションを打ち立て、このまま訴訟にいったらこいつを相手にするのはやりにくいだろうなと思わせる
(3)ここで少額なりともライセンス実績を積んでおけば、他のビッグプレイヤーとの交渉に有利だろうと思わせる

※この前提には、NPEは通常原資があまり多くないので、早期に小金が入るのは歓迎されるという要素もある。

しかし、相手にどう思わせるか、というのが肝になるので、ネゴシエイターのスタイルやら資質に依ってしまう嫌いもあると思う。