知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

独創を貫く経営

先日、とあるセミナーで林原グループの林原生物化学研究所の方の話を聞く機会があり(と言ってもパネルディスカッションでの短いものだったのだが)、その中で社長の林原氏の著作を紹介された。講演の中に出てきた経営・事業ポリシーが大変興味深かったので、図書館で借りて読んでみた。

独創を貫く経営-私の履歴書-

独創を貫く経営-私の履歴書-

いくつか印象に残ったところをメモ。

判断力は精神と肉体のバランスの上に成り立つ
いまも空手の練習を続ける理由の1つは、最善の判断のためである。体が衰えても頭脳や精神がしっかりしているということはあり得ない。

 

「メセナは企業の生命線」(91年に第1回メセナ大賞受賞)
研究開発型企業にとって、最も大事なことは社員の創造性、独自性であり、それをはぐくむ柔軟な組織である。
『創造性を高める方法は関心ある異分野の知識・経験をできるだけ多く持つこと』(糸川英夫氏)
『組織だったる混沌』(江崎玲於奈氏)
メセナがあるから、地方の一企業ながらどこに行っても大企業と同じくらいの知名度がある。よい印象を持たれ、営業にも大きな力になる。地方の企業にこそメセナが必要。

「林原のおもちゃ箱」
グループ全体に、面白く楽しそうなテーマがたくさん転がり、それらの研究成果が捨てられないでしまわれている

「独創こそ割にあう」
応用的な研究は、多少の成果が見通せる・しかし、途中までの過程は他社と共通している。そこから出発するから、一番になるために競い合い、トップになった部分でしか利益を生み出さない。競うことに大変なエネルギーを費やす。しかも、少し油断すると、すぐに追い抜かれて陳腐な技術になる。競争の激烈な世界からは、意外に画期的な製品・商品は出ないし、あまり収益にはつながらない。
基礎をベースにした研究は、研究のすそ野から成果に至る過程、そこから派生する副産物まで、すべてが自分のものになる。これは少々のことでは、他は真似も追随もできない。独創への挑戦はリスクが大きいと思われているが、実は逆で人真似ほどリスクは大きい。
『独創は出したいと思っている人間には出せない。事実を丹念に追っているうちに新しいことに巡り会う』(長野泰一氏)