知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

北京裁判所傍聴記(2)

本件開廷である。原告側は、代理人弁護士と商標代理人の2人。被告側は、商標局評審委員会の審査官2人。傍聴者が、こちら側は二人(私と代理人事務所の法務担当者)、被告側は商標局の審査官らしき1人。ちなみに、被告席の審査官2名は、非常に若く、ついでに服装もかなりラフだったので、私は最初商標局の代表だとはまったく思っていなくて、別の事件の当事者だと思っていた。後から聞いたところ、まだ経験も2年ほどのキャリアの浅い担当官であるとのことだった。商標も出願件数の激増で、審査官を急激に増やしていて、経験年数の多い審査官はあまり多くないらしい。

傍聴は、話をしてはいけないが、メモは取っても良いとのことで、法務担当は、後からレポートを作成するために、せっせとメモを取っていた。他にも行政訴訟の経験のある商標代理人によれば、メモも許してくれない裁判官もいるとのことで、そうなるとなかなか大変。わたしはまるで中国語が理解できないので、もっぱら雰囲気だけ味わっていたが、それだけでも十分伝わるものはある。

さて、審理は次のような順で進行した。

1.当事者双方の身分確認
2.法廷調査(争点の確認、証拠の確認)
3.原告の訴訟請求及び主張理由
4.被告の訴訟請求及び主張理由
5.法廷弁論(「新たな主張はあるか」との裁判長の質問に応じて)

既に訴状は提出され、被告からの答弁書も出ているので、3及び4の主張は、裁判長からの要望で「要点のみ」5分以内でとされた。ちなみに、被告からの答弁書は事前に届いておらず、開廷審理の直前にコピーを渡された。おまけに押印もなされていなかったので、審理後正式なものは追って出しますということで回収されてしまった。答弁書は、一読した商標代理人によれば、審決書とまったく同じ内容だったということである。

原告側は、5において被告の主張への反論を行い、さらに、補充主張も行った。これに対して、被告はあまり有効な反論をその場で行うことができず、裁判官の心証としてもかなり原告側に傾いたのではないかと思われた。

しかし、聞くところによると、なにしろ面子の重要なお国柄のため、裁判所が行政訴訟において、行政庁である商標局の判断をひっくりかえすのにはかなり慎重だという。まあ本件がどうなるのかは、判決が出てみないとわからない。

さて、5まで終了してから閉廷し、裁判官3人は退席。書記官が開廷記録を印刷しに事務室へ行っている間、被告席+傍聴席の審査官3名と当方の代理人は和やかに談笑。開廷記録を一読し、補充主張が入っていなかったので、それを手書きで当方代理人が書き加えて署名して終了。この時点で既に17時半になっており、建物はすっかり戸締まりモード。追い立てられるように法廷を後にし、受付で本来は入館カード(受付時に身分証のコピーをとって作成されたもの)を返却しなくてはいけないのだが、既に受付も帰宅して人がいないのでそのまま建物を出た。

この後、開廷審理における主張を元に、代理人意見をまとめて近日中に裁判所に提出するとのこと。裁判官は、双方から出されるその意見書を読んで判決を起案し、それが知識産権の廷長の承認を経て北京市第一中級人民法院全体の所長の承認後、判決が出されるという形とのことである。5月か6月には判決が出されるのではないかという見込み。何しろ争点は商標法28条のみなので複雑なところはまったくない案件だから。

ともあれ、初の中国裁判傍聴はこんな感じで無事終了。この後はそのままタクシーで飯店に乗り付け、中華料理に舌鼓を打ちました。本場刀削麺を削らせてもらいました・・・。サソリは食べる勇気が出ませんでしたが、その他の料理は美味しく頂きました。はい。


北京裁判所傍聴記(1) - 知財渉外にて