6月14日夜に所属会派(弁理士クラブ)主催の米国特許セミナーがあった。テーマが先ごろ最高裁判決のあったQuanta事件で、米国弁護士さんが講師をされるということなので、東京かつ夜間の研修だったが参加。
企業内の実務にも結構影響がありそうなので、東京支店の担当を連れて行きたかったのだが、今回は継続研修の単位認定対象となったことで申し込みが殺到し、満員御礼なのでと断られてしまった。が、参加してみると、会場内はガラガラ。当初予定人数より増えたので会場のほうを広くしたのかもしれないが、それなら申し込み人数のほうも増やして対応してほしかった。英語も大変わかりやすかったので、もったいないなぁ、と思ったことだった。
さて、本件は、特許権者(LGE)が、ライセンシーであるチップメーカー(インテル)からチップを購入してPCを組み立てたPCメーカー(Quanta)を、特許侵害で訴えたもの。
特許権者が有する特許ポートフォリオには、チップ自体、チップと他の部品を使用する方法、チップと他の部品全体のシステムの三種が含まれており、この全体がチップメーカーにはライセンスされているが、PCメーカーにはライセンスはされていない。
チップメーカーの製造販売段階では、チップ自体の特許しか実施されておらず、そのチップと他の部品を組み合わせて第三者が組み立てを行うことはライセンスの範囲外と契約上明示されており、インテルは、チップ販売の際にその旨を販売先に通知する義務がある。
争点となったのは、ライセンスを受けた正規品であるインテル製チップの販売により、チップ自体の特許のみならず、使用方法やシステムの特許までが消尽する(ライセンス品のチップを組み込んだPCに対して使用方法やシステムの特許権を行使することができない)か否か。
最高裁の判断は、『どちらも消尽する』。
このため、「方法特許も消尽しうる」、「部品の特許のライセンスでそれを組み込んだ製品の特許も消尽してしまう」と捉えられて話題になっているようだ。
しかし、今回の特許群の場合、方法にしてもシステムにしても、発明のポイントはチップの方にあり、他の部品との組合せに新規性など発明のポイントが存在しないことに注意が必要。どの特許も実質は同一であるから、特許権者による二重取りは許さないという論理が働いたと言えるだろう。
今後同種の争いでは、発明のポイントがどこにあるのかが争いとなってくると思われる。
#しかしやっぱり月曜から東京で9時まで研修というのはきつかった・・・。眠い。フレックスでない当社は朝で調節できないんだよね。
※追記
NGBから送られてきたメルマガで、同社のサイトに解説が載っているのを知りました。参考まで。
PatentlyOに掲載されたProfessor McGowanのコメント
IP NEXTニュースで紹介されていた米国弁護士の論説。
松本直樹弁護士の考察。
NBL No.887 P29 「アメリカ特許法における消尽法理の展開」 村尾治亮