知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

読書論

あちこちで取り上げられている&平積みになっているのでごぞんじの方も多いと思うのだが、小宮 一慶さんの「ビジネスマンのための「読書力」養成講座」を読了した。(どうも最近ディスカバーの書籍を読む頻度が高い。

ビジネスマンのための「読書力」養成講座 (ディスカヴァー携書)

ビジネスマンのための「読書力」養成講座 (ディスカヴァー携書)

著者が書いているように、世の中速読ブームの感があるが、この本では、目的に応じて読書を5つに分けている。

(1)速読:求める情報を探すために要点をすばやく把握するための読み方
(2)通読レベル1:最初から最後まで普通に読んでいく(楽しみのため、一定の知識を得るための読書)
(3)通読レベル2:線を引いたり書き込んだりしながらじっくり読む(論点を整理し、考えながら読む)
(4)熟読:いろいろなことを参照したり考えしたりしながら丁寧に読む
(5)重読:同じ本を繰り返し読む

そして、これらのうち、(2)通読レベル2と(3)熟読が思考力を深める読み方だと主張されている。入門書などでその分野の基礎を押さえるときには(2)通読レベル1で読める本を時間をかけずに通して読んでおく。そして、それを本当に役に立つように身に着けるには、(3)通読レベル2が必要になる。(2)通読レベル1と(3)通読レベル2の使い分けは、中身のロジックの重さ。

(3)通読レベル2を行うのは、論理レベルの高い本。著者のロジックを追うために、じっくりと線を引いたりメモを取ったりしながら読む。ロジックを追えるようになることが、思考力をアップするということ。そして、このレベルの本をどれだけ読むかで、知識ベース、論理思考のベースが出来上がる。よって、(1)速読や(2)通読レベル1で読み取れるインプットやインスピレーションの量が増えていく。

そして、(4)熟読では、その本を最初から最後まで読み通す必要は必ずしもなくて、必要な箇所を引用文献や脚注の原典に当たったりしながら関連づけてしっかり読む。この読み方は、仕事上読む必要がある文献の読み方だなぁと思った。知財管理とかにのっている論文を読むとき、本当に自分の仕事で必要だと思えば、注もガッチリ読むし、その原典にもあたる。条文があげられていれば法令集を開く。著者が「限られた時間内でする熟読」の例として、交渉時に読む英文契約の例を挙げているが、契約書を読むとき(既に締結した契約の内容を理解するためではなくて、これから結ぶ契約の審査をするとき)は基本的に熟読だ。特許の明細書を読むとき。これも、出願前調査のためにざっくり内容を理解するなら通読レベル1でよいが、侵害抵触判断とか、無効調査とかの場合は熟読して、中に引用されている文献にも当たって、とか日常的に行っている。判決文を読む場合もそうだ。などと考えていたら、CAFCの判決を読む必要が出てきて、それこそあちこちあたりながら念入りに熟読した。

さて、私はいわゆる速読法を受講したりしたことはないが、本を読むのは速いほうである。なので、新書などはほとんどの場合どんどん読み進んですぐ読了することの方が多い。楽しみのための読書もたいていこのパターン。著者の言う通読レベル1の読書形態が常態になっている。が、同じ新書であっても、それから、自分のものにしたくて買ったハードカバーなどは、意気込んで買ったにもかかわらず、途中で挫折して積ん読になっているものが多い。(さっぱり読まないものだから、先日不要品処分をしたときに思い切ってほとんど捨ててしまった。今回、この本で挙げられている本が結構その中に混じっていて(しかも未読だ)かなり悔しい。)

どうやらこうやって挫折していた本たちは、通読レベル2や熟読で読む本だったのにもかかわらず、いつものように通読レベル1で読み飛ばそうとしたので頭に入ってこなくて著者の論理について行けなくなり、途中で終わってしまったのではないかと思い至った。本のレベルと自分のレベルの差に合わせて読書法を変えるべきだというのは思いつかなかった。せっかくなので、これからはこれを意識して試してみよう。

本を読むまえには、ざっと目次を見渡して、これはどの読書法でよむべきなのかを決めてからとりかかることにしよう。ここで紹介するときにも、どれで読んだかを書き残しておくとよいかな。

そして、一度読んだからと言って安心せず、熟読したい本は熟読すること。どうも娯楽本は何度も読み返すくせに、知識を得られる本は読み返すことが少なすぎるようだ。これも、今後は意識しよう。