少し間が開いてしまったが、『ライセンス契約のすべて 実務応用編』 にコメントするシリーズ4回目。
- 作者: 横井康真,青木武司,西岡毅,山浦勝男,橋詰卓司,吉川達夫,森下賢樹
- 出版社/メーカー: 雄松堂出版
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 単行本
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1.3 ライセンシーの契約内容に対する認識不足に起因するリスク
はい、これはよく起こります。契約書をよく読めば書いてあるのに、よく読む人は非常に稀であるというところから発生する悲劇?である。契約を締結するのは、法務部門だったり知財部門だったりして、まあ契約書に慣れているし、読めば明らかという条項までは落とし込めることが多い(と信じたい)。が、出来高払いのロイヤルティを計算するためには、対象製品の特定と計算方式のあてはめを適切にする必要があり、これは実際に製品を設計製造する事業部門にやってもらうしかない。契約書において適切な条件設定がなされていても、知的財産権を実施するライセンシーの現場が契約内容を理解していないがために、ロイヤルティ発生対象と認識せず、結果的に適切に申告されない
対象製品が、この事業領域の製品全部、とかならまだ漏れが少なくて済むが、特定の技術を採用した製品にのみかかるという場合だと、まず契約締結の時点で対象製品を洗い出し、さらにその後の新製品がでる度に、支払い対象となるかならないかのチェックをし、それをシステム上に反映させて、販売実績集計から引っ張れるようにする必要がある。社内でこの仕組みがうまくできていないと、いとも簡単に対象となるべき製品がリストから漏れてしまうということが起こる。新製品が頻繁に出るような種類の分野では特に要注意。できるなら、社内でチェックするシステムを万全にしたいところだが、看過されて、みつかるのは監査の時、というケースも多いと思われる。
また、OEM供給を受けている製品がRoyaltyの対象となる場合、その負担をするのは供給元なのか、自社なのかにも注意が必要。自社ブランドを付して販売する会社に支払い義務があるのが通常だが、OEM供給元でひとまとめにして支払いを行った方が管理コストは下がるので、そのような処理を許容している契約もある。供給元の言い分をうのみにして支払いが行われていると思っていたところ、実は自社が支払う義務があった、なんてことにならないようにしたいところ。
支払い漏れのリスク管理という観点とは離れるが、どの製品にロイヤルティがかかるのかは、原価管理上も重要な事項なので、社内的にはここの管理も合わせて行いたいところである。
1.4 ライセンシーの悪意に起因するリスク
悲しいかな、この誘惑は事業部門においては絶えることがないらしい。特に、業績が悪化して利益がでない状態だと、製造コストを1円単位で削っても利益が出ないのに、その利益からがっぽり搾取される?のは我慢ならないということのようである。米国相手だと、Discoveryがあるので嘘や誤魔化しはご法度で、うっかりやろうものなら大変な目に合うといのは身にしみているのだが、日本企業相手だと、
と思うらしいのだ。これはもう、ロイヤルティがどうのというより、企業姿勢と言うかコンプライアンスというか、の問題ですな。言わなきゃわからないのになぜ自分から言わなければならないんだ