商標は、知財なんていう用語が出てくる前から『工業所有権』の1つとして取り扱われてきた。日本では、特許庁が管轄してきたし、商標の出願代理は弁理士の本来業務の一角を占めてもいる。
とは言え、特許と商標じゃ対象は随分と離れている訳で、新規な発明という創作物を保護するのと識別標識に化体した信用を保護するのとでは、同じように考えていたのではむしろ失敗することも多いのではと思う。日本の工業所有権4法は特許法を中心にしてよく似た作りになっていて、共通部分は特許法の準用で済ませている訳だけれども、深く考えずに商標法でも準用されてしまっていて本当にいいのか?なんていう条文もないではない。
ワールドワイドでみれば、特許と意匠は同じ法律だが商標は全然別個という国もあるし、中国では特許と商標は管轄官庁がまったく別である。代理資格も、異なる制度になっていたりする。Patent AttorneyとTrademark Laywerは別物というわけだ。これはおそらく特許には技術系のバックグラウンドが求められるけれど商標には不要というところから来るのだろう。
日本の場合、弁理士はもちろん必須科目だから特許も商標も専門家として取り扱うし、特許事務所に商標依頼を持ち込んで断られることはまずないだろう。とはいえ、常日頃から特許も商標も業務範囲としている方よりは、どちらかが専門である方の方が多い。東京や大阪では商標専門の弁理士も多く、特許側からすると、商標は怖くて手が出せない側面もあったりする。それなりの件数を日頃からこなしていて勘所をみにつけておかないと、誰にでもすぐにわかる標識を相手にするだけに、失敗したときのリスクが大きいのだ。また、弁理士の業務範囲が狭かった時代でも、関連の深さから、商標弁理士は、不正競争防止法や著作権法も守備範囲としてきており、そのあたりの周辺まで特許をやりながら広げるのは荷が重いということもあるかもしれない。
というわけで、弁理士の世界では、けっこう棲み分けがされている。
企業内ではどうかといえば、伝統的に「特許部」があったメーカーなどではもちろんその部内に商標担当が置かれてきたけれども、これもまた特許担当とは別のことが多く、担当セクションも、管理セクションや渉外セクションに置かれることも珍しくない。人についてたらい回しに所属が変わったりもする。
会社によっては、商標だけ知財部門ではなく、経営企画部門や営業企画部門にあったりするし、商標だけ法務ということもある。これは、特許がその会社の開発動向や技術トレンドと関係が深く、ロングスパンで考えるべきものであるのに対し、商標は、事業展開と関係が深く、すぐに対処を求められることが多いからだろう。
なんて、ものすごく大上段で長い前置きを書いてしまったが、要するに、法務部に統合されて上司の意向で商標業務はビジネスリーガル担当セクションに引き取るといわれたのでした。担当ごと移動で、私はレポートラインから外れる。移動先がまだ入社したばかりの方なので引継ぎに暫く時間がかかるし、社内アナウンスも必要なので、正式切り替えは秋になるだろう。
しかしね、久しぶりにちゃんと勉強して取り組もうと思ってたんだけどな〜。ちょっと残念。