知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

新 商標教室

新版が出たと聞いてすぐに本屋にチェックに行き、購入したものの、これはしっかり読まなくてはと自宅に持って帰ったらそのまま積ん読されてしまったという。。。しっかり読むには重すぎた(着手ができず)。

新商標教室

新商標教室

このままではお蔵入りさせてしまいそうで怖くなったので、無理矢理東京出張の友に。そして、商標担当のいる東京支店に置いて帰る予定。

さて、この本は、著者が書かれている通り、『商標観』を正面から述べた希有な本である。その点は旧版から変わっていない。新版ではそれをサポートする部分がさらに厚みが増して充実ぶりにめまいがする感じになったというか。

ということで、商標法を解説するわけでも、商標実務の説明をするわけでもなく、本書は、商標について押さえておきたい4つの点を中心に述べられている。それが、1〜4章を構成していて、

第1章 商標論(商標とは何か)
第2章 商品論((商標が付される対象たる)商品とは、サービス(役務)とは何か)
第3章 識別性論(商標が識別性があるというのはどういうことか)
第4章 類似性論(商標が類似するというのはどういうことか)

となっている。これに、

第5章 制度論(このような商標を日本の商標法はどのように保護しているのか)

を足して本書が完成する。

商標の実務担当者が本書を最初から読み通すのは中々骨が折れると思うけれども、疑問に思ったときにレファレンスのように関連部分を読むようにしていき、しばらくしてそれなりに実務がこなせるようになってから通して読むと理解が深まるのではないかと思う。また、社内の担当として、商標の調査依頼を受けて結果を返すときにぶつけられる素朴な疑問にどう答えたらよいのかのヒントを与えてくれる本だと思う。

本書P295 以下に、弁理士には特許弁理士と商標弁理士があって、技術系の特許弁理士から見ると商標は技術用語と異なり一定した基準がなく、あいまいで難しく感じるようだ、という話が書かれている。確かに、弁理士としては特許も商標もコア業務であることは間違いないのでどちらも専門家としてそれなりのレベルにある必要があるのだが、普段商標を取り扱っていない者が半端に手を出すと火傷をするのが商標と言えると思う。そして、その火傷は外から見てとてもわかりやすいという厄介なものである。審決や判決を見ないと判断しかねるところがどうしても残るし、審査や審判の傾向も時代とともに変化する。そして、商標の侵害となった場合の影響は新版計り知れない怖さがある。

社内の商標担当としては、そこまで追いかけていられないので、詳細は専門家にお任せして、基本的なところを押さえておく。時々最近の審判決を読んでみて、傾向を掴んでいくというところだろうか。