知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

出会いと別れ

7月半ばに法務側に採用された方が、3ヶ月の試用期間を終了して本採用には進まない決断をされた。理由は、入社前に聞いていたことと入社後に与えられた仕事内容その他にギャップがあり、自分の人生をここに賭けるわけにはいかなくなったとのことだった。

まあ確かに漏れ聞いたところによれば、入社前に上司が語っていたことと入社してからの彼に対する仕事の与え方、そもそもの仕事内容等はずいぶん違っていたようなので、無理もないと言えば無理もないのだろう。というか、はっきり言えば、採用面接での上司の印象と、入社後に上司として目の前に立たれたときの印象とがあまりに違っていて(以下略)、これではやっていけないと思ったらしい。かなり引き留めたんだけど、やっぱり無理だった。いきなり豹変されるとそりゃ怒るわな・・・。しかも試用期間じゃね。

良くも悪くも人に惚れて入社を決めるとそれが裏切られたときの落胆も大きいなあと思ったりする。

自分の時の試用期間て、何してたっけ?とブログを読み返してみたりして(そのくらい印象が薄いんだが)。新しい環境でそれなりに緊張して、なんだか色々さっぱりシステム化されていない部門の状況にシステム作りに燃えてみたり、係争の担当部門がねじれている(知財と法務がごちゃごちゃしていた時代)ので不満に思っていたり、人脈をつくりつつ、さっぱりまだわけがわからない、と思いつつ、まあ会社なんてこんなもんよね、と色々環境が違うのにびっくりしつつも過ごしていた感じ。

とりあえずは、知財なんてやることはどこでもさほど変わらないので(法務はそういう意味では会社が変わったら大きく違うのかもしれないが)、業界キャリアだけは誰より長いところに依って色々な不安と戦いつつ過ごしていたんだった。会社内部の力関係とか、作法とか、暗黙のルールとか、人脈とか、諸々が頭に入ってきて自分で動きが作れるようになって来たのは1年以上経ってからで、やっぱり役職がついてからが本格稼働だった気がする。

ヒラ社員だったときは、部長との距離も遠かったし(おかげで彼からは私の動きがよく見えず、能力評価も低くて、GLにするときにはかなり清水の舞台から飛び降りる気持ちだったらしいのだが)、社歴が長くてでも知財歴は短くて年下の直属上司に頼りつつ遠慮しつつというスタンスにもストレスがそれなりに溜まった(あまり意識はしていなかったけど、上司から同格になってずいぶん動きやすくなったことで実感。さらに今回の組織変更で関係が逆転してさらに動きやすくなった・・・。って単純というかシビアだ>自分)。

にしても、私にとって最優先は、企業の中で知財業務ができることで、その企業はなんでもよいわけではなくて、自分が好きな分野の製品をつくっているメーカーが望ましい。そして当然地元企業で。となると、実はそれほど選択肢は多くなくて、勤務地を変えるつもりがなければかなり今の会社にしがみついている必要があるわけ。年齢的にも転職は厳しいしね。事務所に戻る気があればなんとでもなるとは思うんだが、企業に戻ってみて何度も実感するのは、私はやっぱり組織人であって、組織の中でそのバランスを考えて動く方が性に合っているということなのだ。

となれば、それなりに会社に自分をあわせる努力はするし、その上で、自分を認めてもらって行動の自由を確保する。やらせてもらえれば、そして、それなりの人材を使わせてもらえれば、成果を出す自信はある。ということで、この1年やってきたし、ここから先もやっていくだろう。

話がそれたが、件の3ヶ月で風と友に去っていった彼とは、個人的なおつきあいは続けていきたいものである。気持ちの良い性格で、一緒に仕事をできなくなったのは大変残念ではあるのだが、まあ広い意味で同じ業界ということで、縁が切れるわけではないだろう。またそのうち呑みましょう。心機一転、ご活躍を祈念します。