知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

自分の土俵

渉外からプロゼキューション側に戻って2月ほど経過した。(ということでいいかげんにブログのタイトルも少しだけ変えてみた。)

渉外の引き継ぎは順調で、まあ案件があまり激しく動いていないこともあって、ほぼ問題なし。このままひっそりいなくなってもほとんど困るまい。ってか、いなくならないんだからそうそうしゃしゃりでなくても疑問が出てくれば聞けばいいわけで、立て込んでこなければ大丈夫。なんつーか、存在価値に疑問が出てくるようなスムーズ振りだ。

新しい体制の方は、ミッションから見直しをかけているので、2ヶ月も経って目標設定もそれに伴う評価基準もが固まっていないというていたらくなんだが、まあこれは走りながらやっていくしかないだろう。

それにしても、この変化に際して思ったこと。渉外の仕事は自分がプレイヤーとして完全に業務をこなすことができるので、マネジャーをしていて部下を動かしていたとしても、いざとなれば自分が全面的にコミットできるという自信があった。翻って権利化側の仕事は、その気になればできなくはないだろうけれども、今やってもらっているベテラン組の仕事の水準と同じだけのパフォーマンスを叩き出すのは残念ながら難しいだろうということだ。

例えば、現在の当社の開発の知財リテラシーレベルからすると、常にこちらが開発動向に敏感になっていて、業界動向や関連技術動向をウォッチし、その中で出てくる想定課題を抽出して、開発にトリガーを投げて初めて発明の種のようなアイデアが出てくることが多い。思いつきのように先行技術の調査依頼が出てくることがあるが、これにしても、それだけでは何が調査の対象なんだかさっぱりわからないので(提出してくる本人にもよく分かっていない)、同様に、開発の動向やらなんやらで行間を埋めて、こんなこと?あんなこと?と引き出して初めて意味のある調査が可能になることが多い。

もう少しこのリテラシーレベルを上げる教育活動をしろよ、という話も一方ではあるのだが、製品の寿命が短く、製品アイテム数が多く、開発期間が短い中でやりくりして開発活動を行っている事業部門に対してとてもそこまで求められる状況ではなく、そうまでして特許を取る必要があるのかという根本命題をすぐにつきつけられてしまうために、そちらをなんとかするのは難しい。

となれば、知財側でなんとかするしかないわけで、まあそこはそれ、事業部経験のあるベテランを配置して、上記のようなことをやってなんとかしのいでいるわけですな。

となると、例えばベテランの方々が何らかの理由で同じことができなくなった場合に私が完全代替できるかといわれると正直厳しい。技術動向と関連技術の勉強をもう少しみっちりやって、さらに開発に張り付いて2年くらい過ごせばなんとかなるんだろうが、残念ながらそこまで許される時間がない。当社に入ってしばらくは似たようなことをやっていたので、継続していればもう少し何とかなったのかもしれないが、早々に渉外側に抜けてしまったので中断してそのままである。そんなヒマがあったらマネージャ仕事しろよという圧力がかかるので、惜しいかなこの手の基礎力を蓄える余裕は永遠に来ないだろう。どちらかといえば、同じことを若手に身につけさせるにはどうするかを考えるのが私の今の仕事だろうね。

出願できるレベルのアイデアに持ち上げた後であれば、出願の方針を立て、それに見合った明細書を作成し、中間処理を経て権利化させるというところはいくらでもやるんだけどな〜。ここは全体の負荷からするとそれほど重くもなく、楽をしているような印象が正直ある。ガッツリ取り組まないで明細書レベルから参加すると、中間の時に内容把握に手間取る恨みもある。

という状況下、できるだけ生産性を上げるために仕事の振り分けをしていると、自分がプレイヤーでこなす仕事量よりベテランのみなさんに振り分ける仕事量が多くなりがちで、つぶさないように人を使いつつミッションを達成するのは難しい、ということに。マネージする範囲が広くなれば、自分が全てできることばかりではなくなるのが当然なんだけれども、プレイングマネージャーを求められる状況下でプレイヤー領域を選択せざるを得ないというのはなかなか心情的にはキツイものがある。

と、ここ2ヶ月ほどで、私のホームはやっぱり渉外なんだよな、と改めて思ったことだった。だからどうということでもないし、渉外が恋しいので今すぐ戻りたい、ということでもないんだけれど。