今年の最初の月刊「パテント」が届いた。表紙の色が昨年より少し濃くなって、レモンイエローから橙系?という感じ。
今月号の特集は、「知財における人材育成」ということで、
・座談会「特許事務所における人材育成」
・飯村判事特別インタビュー 知財裁判官が生まれてから育つまで
・「知的財産本部長の苦悩」弁理士 西野 卓嗣
・「大学における知財人材育成」大阪工業大学知的財産学部長 田浪 和生
・「理系学部における知財教育」 弁理士 古川 安航
・「審査官の人材育成に関する最近の取り組みについて」 特許庁 森川 幸俊
・「研修所における知財人材育成のための活動」弁理士会研修所所長 真田 有
と盛りだくさん豪華絢爛?であった。
特に興味を惹かれたのは、座談会の恩田先生と龍華先生の事務所での育成方法、西野先生の企業知財を題材にしたストーリー仕立ての記事。
オンダ特許事務所でQC活動を盛んに行っているという話は聞いたことがあったのだけれど、その効果の最大のものが事務で(確かにそうだろうな、と想像がつく)、あらゆる業務について(相当頻度が低いようなものについてまで!)マニュアルがあり、それがしっかりアップデートされているということ、そのおかげで常時産休の方が12〜13人いても、帰ってきたときに復帰がスムーズにできるということで、その徹底ぶりに驚愕した。250人規模の大手事務所なので、かなりシステマティックにやる必要があるのだと思うが、凄い。
RYUKA特許では、ディスカッションをすることを重視するという話があり、相当なリソースをかけることについて価値観を共有することをちゃんと何度も伝えることをしているということで、確固とした信念と忍耐がいる(短期的な売上げ増加には結びつかないので)と想像でき、こちらも凄いと思った。また、龍華先生の発言で印象的だったのは、明細書を書く「職人かたぎのような人」の話題になったときに、
と言われていたこと。おれはこんなの書かない。では説明ができていない。なぜそうなのかを直す方も振り返って考える。ノウハウとして持っていた知識を顕在化し、あるいは文章化して人に伝達できることで職人がリーダーに成長する。ということである、と。ここでいう職人と職人でない人で何が違うかというと、きちんと説明をできるかどうか
さらに、明細書作成の向き不向き(センス?)については、
であり、論理的な思考力と技術的知識があり、あとは謙虚に学びたいという気持ちがあれば大丈夫
ということらしい。最初は原因と結果の因果関係が雲のように漠然としている・・・そこからクレームを作ろうと思うと、因果関係をひもとかないと行けないわけですが、そのひも解くと言うこともトレーニングが可能です。雲のように漠然としていても、まず原因の要素をりストアップすることはできます。・・・リストアップして、どの要素がどの効果とつながっているのか図にしながら考える。そういうトレーニングをすると、ある程度、因果関係をひもとくことができるようになる
西野先生の記事は、企業知財部における育成について正面から書かれるのではなく、このほど定年を迎えたある知財本部長のキャリアを振り返る形でのストーリー仕立てになっており、ありそうなイベントがてんこ盛りに用意され、それが育成に絡めて書かれるという豪華なものになっている。とても読みやすく、それでいて考えさせられる内容で、さすが、というしかない。