昨日の生臭系エントリにTwitterを含めいくつかコメントを頂いた。
セクショナリズムに陥るのは怖いというもっともな指摘の一方、理想はもちろんそうだけど、知財と法務は近そうで遠いのでなかなか難しいというコメントもあった。また、一般契約書の知財関係の条項をどうするかというのは知財と法務の境界領域であり、もめやすいという指摘もあり、『知財に契約書が書ける人材がいればいいんですが』とも。
知財と法務の距離については、渉外領域でこそ重なるけれども、知財の本業?である権利化のところや法務の会社法関係やら企業法務系をとってみればまったく重なるところがなく、共通語はほとんどないのでは?と思ったりする。契約法務の一部、訴訟の一部領域で重なるだけと言えましょう。偉そうなことをいろいろ書いて法務系の方々に物議をかもしておりますが、私とて法務もまとめて面倒みろと言われたら知らないことが多すぎてちょっとヤダというのが本音。
バックグラウンドで言えば、法務の方々は、大抵は大学の法学部出身で、いわゆる文系王道のため、どうも技術が絡むとかなり強い拒否反応を起こされることが多いように思う。特許のライセンスとか、技術導入とか、共同研究・開発、開発委託等は、目的物が技術的なもので、その内容の理解ができないと契約の良し悪しを見極めるのも難しいし、だいたい審査や起草していても隔靴掻痒感が強くておもしろくないだろうと思ったりする。
一方知財屋は、大抵理系出身のエンジニアで、開発者から転じるケースも多い。特許明細書の読み書きが出来るようになるにもけっこう時間がかかったりする(あんまりそれまで日本語をまとめて書いてきていないので,国語力が弱い)。それでもずっと権利化業務をしていけば、あの独特の言いまわしにも(善し悪しはともかく)慣れ、判決文を読んだりして裁判所の文章にも慣れてきたりはする。しかし、やはりどこまでいっても技術者なので、正解を求める傾向は強いし、ものの全体像を見て判断し、大きな枠組を捉えるだけで厳しい(ここまでは渉外にも必要な力量)。それをさらに契約書に落とすとなるとかなりハードルが高いと思う。知財に契約書が書ける人材は普通は育ちません。
これは知財渉外の人材の力量を考えるときのテーマでもあるのだが、バックグラウンドとして知財系と法務系のどちらが教育すべきことが少なくてすむか。向いているか。知財系の部下と法務系の部下を持っていて、どっちが近道?とか毎日思っている。
困るのは、技術にアレルギーのない法務の人材や、契約ができる知財の人材は、その時々で輩出されると思うけれど、それでは仕事が人に付いてしまう。それぞれの部門の機能としてその部分を持とうと思うと継続的に教育する仕組みまで必要になり、ひょっとするとバックグラウンドももっと求められるモノが変わってくるかもしれないということ。
ともあれ、当社程度の規模ではないものねだりをしても仕方が無いので、なんと折り合いをつけてやっていくしかない。本日東京支店で法務部長に次回の東京出張時に話し合いの場を設けたい旨ほのめかされたので、ま、とりあえず腹を割って話をしましょう。