知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

「パテントプールを巡る諸課題に関する調査研究」

特許庁が行っている産業財産権制度問題調査研究の平成24年度テーマの一つであった、標題の調査研究をようやく読了。報告書のサイズが示すとおり、膨大で((本編だけで195ページ)、印刷はやめてiPad miniに落として読むことにした。内容も濃いものであったので、興味深く読み進んだのだけれど、いかんせん通勤の往復30分もない中でしか読まないものだから(オイ、ずいぶん時間がかかってしまった。

内容は、16ページに亘ってまとめられている『要約』とくに冒頭の図解に明快に示されているが、アンケートに加えてヒヤリングが行われており、その生の声がふんだんに本編に入れられているので、同じ業界内にいてすら発見や気づきがあるし、本編を読んだ後にまとめを読んだ方がより頭に入りやすいと思う。

本研究は、パテントプールに焦点が当てられているけれども、『環境の変化』については、パテントプールに止まらない分析もなされており、現状の分析としてとても有用だと思われる。

現状純粋ライセンシーの立場である当社の視点で見ると、現状の大きな問題は、プールの乱立=各プールのカバー率の低下と、ロイヤルティを払わない新興国企業の増加(により競争劣位に置かれること)の2つに集約される。どちらも、一企業でなんとかできる問題ではなく、そういう認識を持っている企業が(ヒヤリング結果からも)多いということがわかり、やはりな、と思うと共に、綺麗な解決策がないということが改めて認識され、溜息の出る結果となった。

いずれにしても、現在のこの分野の全体を俯瞰する上で読んで損はない報告書である。