知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

「知的財産に携わる人のための標準民事手続法」

知財クラスタではいまや基本書として知らない人がない『標準特許法』の著者、高林先生の標題の本。

知的財産に携わる人のための 標準民事手続法

知的財産に携わる人のための 標準民事手続法

知財職の大半は、法学系ではないので、民法や民事手続法を学ぶことなくいきなり特許法や商標法を学ぶことが多い。本書の「はじめに」に書かれているように、このような知的財産法は、実体法と手続法の側面を併せ持っている(ついでに刑法の側面もある)ので、特別法としての特許法や商標だけでなく、一般法としての民法、民事訴訟法、等々を押さえた方がよいのは言うまでもない。

ただ、知財法が法律のはじめの一歩という大半の知財クラスタにとって、民法や民事訴訟法は、その具体例が土地建物だったり、交通事故だったり、とても身近なものだとは言い難く、かなりとっつきが悪くてハードルが高いものなのだ。

その点、知財専門の研究者で元裁判官である高林先生だけあって、具体例には知財訴訟がふんだんに使われており、実際のイメージがとてもしやすい、まさに『知的財産に携わる人のための』本に仕上がっている。私は一応法学部課程も取っているし、付記試験も通っているのだけれど、本書を読み通して改めて一通りの民事手続法に触れてみると、既に忘れていることも色々あり(汗)、知財部門の書棚におくべき必須書の1つとして、実務で必要になったときにはおさらいの意味で広めに読み直すのがよいな、と思ったことである。

もちろん、若手の教育用にも。

ただ、標準特許法もそうなのだが、本書の薄さに惑わされてはいけない。具体例が大変豊富で、それが大変小さいポイントの印刷になっているので、中身の濃さと行ったら半端ない。老眼が進むと結構辛いと思われます。。。

この本が能力担保検収や付記試験受験の際に存在していたら、全体を一挙に俯瞰するのにとても役に立ったことだろうに!と10年も前のことながら残念に思ったのでありました。