知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

若手のギモン(3):クレームの立て方

さて、忘れないうちにどんどん行きましょう?2号君の直球コース。

あのですね、クレームの立て方なんですが、下位のクレームって、全部上のクレームに含まれるんですよね?だったら、うんと広い上位概念のクレームを1個だけ立ててそれが取れればオッケーじゃないかと思うんですけど。

(『改善多項制の趣旨について述べよ』、の一行問題か?)

クレームの数を増やせばそれなりにコストもかかるわけですし。

おいちょっと待て、クレーム1個増やしたらどれだけコストアップするの?

いえ、具体的な金額は調べてないんで知らないんですけど。

こら、費用の話をするんなら、具体的な金額をまず上げなさい。雰囲気で喋らないこと。まず、日本の場合、クレームの数に出願費用は連動しないの。どれだけクレームを増やしたところで1件当たり1万5千円ぽっきりです。

え?あ、そうなんですか。

増えるのは審査請求料ね。これは、クレーム数に連動する部分があって、1クレーム増えると4000円アップ。でも、そのためにできるだけ減らした方がいいと言うほどの額じゃないよね?まず、そこはちゃんと理解しておいてね。

で、クレームを上位概念から下位概念まで多段階に展開して立てる意味は、いくつかあるんだけど、審査をパスして権利化するという側面から言えば、1個の上位概念クレームだけだと、引例が出てきて拒絶理由を出されたら耐えられない。そこに、中位概念、下位概念のクレームの構成を入れて限定していけば、引例との差異が出せてちょうどいいところで権利化をはかることができやすい。

でも、拒絶理由が出たときに、同じような限定を明細書の中から持ってきてもいいんですよね?最後の拒絶理由じゃなければ。

それは確かにその通り。でも、昔に比べて新規事項追加がうるさくなくなったと言っても、明細書の中からクレームアップするよりも、予め用意してある下位クレームから加えるのは、新規事項追加と言われる虞がないし、もともとクレーム用に抽象化して文言も選んであるので、適切な限定がやりやすい。圧倒的に楽だし、安全に権利化をはかることができるわけ。

一方、権利行使の側面からも多段階クレームの意味はある。めでたく上位概念クレームで権利化されたとして、それを持って権利行使する場面を考えてみよう。たいていの場合、広くて上位概念になっているクレームというのはそれを具体的な製品にあてはめる場合、分かりにくくて解釈の幅ができやすい。色々なものを含むようになっているのだから、当然そうなってしまう。ということは、誰もがぐうの音も出ない状態で権利範囲に入るケースはむしろすくなくて、必ず争いになると思っていい。大体権利行使の場面ですんなり権利範囲に入ってますなんて認める会社なんてほとんどないんだからね。

そ、そうなんですか。

当たり前でしょうが。そんなあれもこれも認めてたらいくらお金があっても足りないわよ。こりゃヤバイなばっちり入ってるな、と内心思ったところでなんか難癖つけてごねるのが普通です。

ふ、深いですね。

(そうか?)

それはともかく、上位概念クレームだと、解釈上の幅があるもんだから、よけいに議論が平行線になりやすいの。でも、これが多段階に具体的なところまでいくつも下位クレームが立ててあれば、その中にばっちり入るようなこともあるだろうし、下位クレームの文言なら同等物だとか含まれるとかが明確になりやすい。そういうときのためにも、色々用意して置いた方がいい、ということだよね。

ふーん、そうなんですねぇ。。。

(まだそこまでピンと来ないかもね。具体的に例を見ないと難しいだろうなぁ。ま、追々)