知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

ライブ講義 知的財産法

霞ヶ関の書原で見つけて購入し、ここ数日必死こいて読んでいた。

ライブ講義 知的財産法

ライブ講義 知的財産法

はしがきに、以下のような記載がある。

私は著書や論文では紙幅を気にして、できる限り短い文章にできる限り多くの情報を詰め込むスタイルを取っている。特に教科書や概説書では、そもそも一冊にまとめるために、相当刈り込んだ文章となってしまっている。他方、講演では、生来の早口を活かして、ひたすらしゃべり続けるものだから、文章の量が多い。そのためか、著書に比べて相対的に分かりやすいという評価を得ることが多いようで、

私自身も田村教授の講義は何度も受けたことがあるし、著書も何冊も持っている。確かに、印象としては著者が上記でおっしゃるとおりで、概説書などは濃密すぎて自分の頭で理解するのに何度も繰り返し読み込まないと難しい一方、講義は(本当にもの凄い早口でテンポ良くなどという生やさしいものではなくすさまじいスピードで進んでいくのだけれど)、とても分かりやすい。

本書は、このような著者の特質?を活かして、ボリュームが多くなるのを厭わず講演録を一冊の書籍にまとめたもの。初出の講義は2005年くらいのものからあるが、そこは書籍にする段階で講演後の法改正や裁判例をもれなく加筆されており、まるでいま講演を聴いているかのようなできあがりになっている。

そして、理論的、実務的に重要なものを選んで収録されたという著者の言葉通り、大変充実していて、かつわかりやすく、そして注記も充実しているので、改めて自分の知識や考え方を整理するのにとても役だった。この手の本は、ちびちび読んでいると前回読んだところを忘れてしまいがちなので、無理にも集中して読む必要があったのだが、珍しく(最近仕事系の本は途中で挫折することが多い・・・)頑張って読み通した甲斐があった。

6章に分けられていて、

第1章 知的財産法総論
第2章 不正競争防止法
第3章 商標法
第4章 特許法
第5章 著作権法
第6章 その他

となっている。個人的には、実務家として知財による保護と実務上の投資効果をどのように考えるか、という観点から第1章を噛みしめたし、しばらくご無沙汰していた商標関係のアップデートに第3章が、このところ何度か聞いた講演の整理に第4章が、特に示唆多く読ませてもらった。

ということで、一通り知識はあるけれども一度全体を俯瞰して整理しておこうという向きに絶賛お勧めの書である。