今年は集中インプットをしようと目標に掲げたわけだけれど、インプットって時間がかかる。年末に、はっしーさんがGoogle+で
と言われていたことをきっかけに(というか猛省して)、ちゃんときっちりインプットしようと思って立てた目標なのだけれど。いかにこのところ自分が『ちゃんと読む』ことをサボってきたかが分かろうというもので。法務で人より「尖ったところ」を作る方法はそんなに難しくなくて、そのテーマについて出されている本を買って読み尽くせば、それだけでも差になります(なのにみんなそれをやらない)。
と、前置きはともかく、12月20日付けで発行された別冊パテントの8号が送付されてきたので、これもキッチリ読まなくては、としばらくあちこち持って歩いていて、ようやく読み終わった(というか、結局この連休で必死こいて読んだんだけど)。
本号は、日本弁理士会中央知的財産研究所の研究報告の第33号となっていて、最近の同研究所の報告はこのように別冊パテントの形で発行されるようになっている。同研究所では、常時3〜4つの研究部会が走っていて、平均2年程度の研究期間(月に1回の研究部会(各研究者の発表と議論)を経て、論文集の形で発行されるのがお約束になっているようである。
ひところ手放したりしたが、現状商標も業務分掌の中に入っており、自社の商標を巡る諸々(調査・出願・権利維持・使用形態のキープ)の他、他社の商標の使い方の相談なども結構入ってくる。
一番困ったちゃんで中々『こんな感じでやりたいんですけど』から減らないのは、他社のロゴを自社商品の説明に使いたいってヤツで、全く悪気はなくて、その他社商品に自社商品が適応しているということを示すいわば説明用なのだけれど、文章で説明するよりロゴを載せた方が分かりやすいし(格好いいし)、省スペースになってありがたい、ということが多い。Mac用ならリンゴマーク、Windows用ならWindowsロゴ、というような。
で、もちろん、商標としての使用ではない=自社の商品の商標として使うわけではなく、パッケージやカタログの全体からみたら、出所の混同もおそらく起きないような態様なんだけれど、多くの(特に外資系の)会社のサイトを見れば一目瞭然で、そのようなロゴの使用は許可されていない。
というようなことをどううまく理由づけて説明するかが実際なかなか難しかったりするのだけれど、そういうのって、というか、だからこそ、というか、制度の趣旨に立ち返って押さえておく必要があり、そうするためには、ちゃんとアカデミックなところ(判例やら学説やら)を押さえておく(そしてできれば比較法的にも)ことが必要だな、と改めて思ったことだった。
上記のようなことは、商標の希釈化(Dilution)からの保護という概念で考えるのが適切だろうと思うのだが、それは、商標の本質的機能が出所識別機能であるが、周知著名な商標になればそれを前提に品質保証・広告機能が発揮され、それ自体に価値が生じることから発生してくるものだ、という整理が必要になってくる。
とはいえ、日本の商標法や不正競争防止法の建付けは、正面から稀釈化の保護を謳っておらず、『混同のおそれ』が要件とされている。いわゆる広義の混同を用いることによって、その効果として稀釈化の保護を達成しているという形になっているのだけれど、それだけに、本当にそれって『混同』なのだろうか?と素朴な疑問をもったりすることもあり、やや法技術的になっている嫌いがある(ので、素人?に説明するときには苦心する)。そのあたりを整理してくれるのが、本報告の中の『商標の稀釈化と混同のないところにおける著名商標の保護』(弁護士 林いづみ)。
また、商標においては『類似』の概念をもって登録要件(4条)とし、権利の効力要件としている(37条)のだが、その類似はどう判断されるかといえば、判例や審査基準において商標が類似のものであるかどうかは、
等とされており、また、商標法4条1項15号が総括規定として混同を生ずるおそれのある商標の登録を阻止する旨を規定していることから、混同が類似の上位概念であり、類似は混同の一類型と理解される。ということ、商標の類似と混同の概念について整理してくれるのが、『11号「類似」と15号「混同」について』(弁理士 川瀬 幹夫)、『商標の類似と出所混同』(弁理士 峯 唯夫)。さらに、比較法の観点からこれらを取り上げているのが、『混同の虞れの認定について』(日本大学知的財産専門職大学院教授・一つ橋大学名誉教授 土肥 一史)。その商標をある商品について使用したああいに、商品の出所について誤認混同を生ずる恐れがあると認められるかどうかにより判断すべきである。
ということで、商標法上の基本概念である『混同』について、久しぶりにきっちり勉強させてもらった。ありがとうございました。