知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

A crazy patent troll ?!

色々と新しい手口を編み出してくる米国のNPE(Non practicing entity)。2011年には、メーカーでなくその製品を使っているエンドユーザー(さすがに個人ユーザーではなくスモールビジネスとか)を大量に訴えるところが登場し、製品メーカーが反訴したりしていたが、その反訴理由の一つ「racketeering」(恐喝か?)に対する裁判所の判断が2月に出たらしい。特許訴訟の反訴としてはかなり珍しい理由だと思うのだが、残念ながら裁判所には認めてもらえなかった模様。

Cisco Takes the Offensive Against Patent Trolls

関連でいくつかこのケースを扱った記事を見つけたので、覚えのために後掲。もちろん本訴の方も継続していてまだ結果は出ていない。どうなることやら。対象特許とNPEの設立当事者との関係とか特殊事情があるようなので、本件に特有の話だと片付けたいところ。このエンドユーザーを大量に訴えるという手法が新しく流行したりすると相当面倒なのでとてもイヤである。下流業者(流通とか)を訴えるのはまだしも、エンドユーザーさんって。メーカーとしては当然放置はできないし、自分だけが被告の場合より訴訟の進め方に気を遣う必要が出てくるし(以下略

かつては訴えるなら「deep pocket」金を持っているところを狙うというのが常識だったけれど、最近の手口の一つであるnuisance fee程度の額を数多くの被告から巻き上げるということをするなら、特に製造者を狙う必要はない。特許の効力はその使用に及ぶわけで(特に米国には『業として』の縛りもないし)。NPEの訴訟手口に慣れていて、戦い方も心得ているメーカーを相手にするよりも、スモールビジネスで訴訟なんかほとんど縁がなく、弁護士を雇って金を払うのも原告と和解して金を払うのも同じ金、と割り切ってくれそうなところを数打った方が効率的に集金できると考えてもおかしくはないんだよね。

これまでの特許訴訟でもスモールビジネスを大量に訴えたところは見かけたけど、それは特許自体がオンラインショッピングとかネット系のもので、スモールビジネスによってサイトが運営されている、というものだったり、決してエンドユーザーではなかったので、少々気がかりな本件の行方である。

■参考記事
Innovatio’s Infringement Suit Rampage Expands To Corporate Hotels
Patent Troll Says Anyone Using WiFi Infringes; Won't Sue Individuals 'At This Stage'
Cisco, Motorola, Netgear Team Up To Expose Wifi Patent Bully