知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

AIA完全施行後セミナー その1

「AIA全面施行後の特許出願戦略と訴訟戦略」と題されたセミナーに参加した。2012年9月の成立から半年、2013年3月16日の最終施行日も経過して、規則も出揃ったということと、既に施行されているものについては、いくつかケースも出てきていることから、今セミナーを開催する意味もあるということなのだろう。

標題の通りの二部構成で、第一部がprosecutionの話、第二部が特許発行後のレビュー手続きについての話だった。

prosecutionについての話は、それこそAIA成立の際に、やまほどセミナーも開かれ、米国弁護士も来日し、いろいろな雑誌に投稿もされたので、何度も目に耳にしている。まあ遡及適用になるわけではないので、正直聞き流していたところもあり、半分忘れかけていた(苦笑)ので、おさらいの意味はあった。そして、施行日を過ぎたばかりの現時点ならではの要注意事項が聞けたのはよかった。

レビュー手続きについては、AIA成立時は規則がまだ出ていなかったこともあり、どんな手続きで実際進められるのかまだよくイメージができなかったのだが、そのわりにすぐに適用になるものもあって、すでにケースが積み上がってきているので、こちらを主目的に参加したもの。甲斐はあったが残念ながら時間切れのところがあってもう少し質問したかった〜。

そして、時間切れになった最大の原因は逐次通訳だと思う。通常、逐次通訳つきのセミナーはできるだけ行かないようにしているんだけど。(どんなにレベルの高い通訳さんでも、専門用語の嵐のために必ず誤りがあるので、それに遭遇するとどうにも気になって集中できない。そして、同時通訳でない限り、結局時間が倍かかるので中身が薄くなるのが効率が悪いため。)米国弁護士持ちの実務家を揃えているんなら、通訳じゃなくて要所で要約を日本語で入れてくれれば十分だったのではと思った。

それはともかく、中身の話。

1. AIAか従前法かどちらが適用されるのか

これは、2013/2/14付のExamination Guidelines for Implementing the First Inventor To File Provisions of the Leash-Smith Ameria Invents ActのSection VIで詳細が明らかにされた。

(1)原則

 (a)有効出願日が2013年3月16日より前の出願は、pre-AIAが適用になる
 (b)有効出願日が2013年3月16日以後の出願は、AIAが適用になる
AIAにおいて、「有効出願日(effective filing date)」は、現実の出願日または優先日

(2)例外というか、(a)(b)両方のクレームされた発明を含む出願

 例えば、出願日が2013年3月16日より前の日本の特許出願を基礎として、2013年3月16日以後に米国出願を行う場合(優先日と米国への現実の出願日が2013年3月16日をまたぐ場合)で、かつ、米国出願時に新たなEmbodimentを追加し、それに基づいて新たなクレームを立てたような場合。
 このような場合には、全てのクレームについて、審査の際に、AIAの102条と103条及びpre-AIAの102条(g)が適用される(クレームごとに異なるわけではない)。この取り扱いは、後に補正によって新たなクレームがキャンセルされた場合も変わらない。

(3)(2)のような出願についてのStatement提出義務

 (2)のようなケースについて審査が適切に行われることを担保するため、出願人は、そのような出願であることを出願時に上申する必要がある。これを怠った場合のペナルティは今のところ明らかにされていないが、non-equitable conductに該当するのではないか、という見方もあるらしい。

要するに、経過措置としての施行日前後の出願の取り扱いで、ここ1年に限った話なのだが、出願人サイドとしては要注意である。外国出願を行うということは、発明の特徴を見直してクレームの立て方も見直すよい機会のため、新たな実施例を追加したり新たなクレームを追加したりすることは、さほど珍しいわけではなく、実務上も良くある話。これを特に上記経過措置を気にせずに通常通りやってしまうと、(3)Statementの提出義務が課せられ、(2)従来の基準で審査されればよかった従前出願のクレームまでAIAのより厳しい基準で審査がされる羽目になり、慌ててそのクレームをキャンセルしようと思っても元に戻すことはできない、という『踏んだり蹴ったり』の羽目に陥る、ということで、できるだけそのような出願は控えた方がよい、というのが米国弁護士講師の見解だった。

長くなったので、レビュー関係は次のエントリーで。