弁理士会近畿支部主催の標題の研修に行ってきた。
初職で一緒だった弁理士さんにお会いして、「台湾出願は多いんですか?」と聞かれたが、その答えは「ほとんどありません。」で、どちらかといえばというか当然ながらというか私の興味はかの国というか地域というか微妙なところの権利行使関係の方にある。改正法の施行直後に部分改正があって 三倍賠償が復活して話題になっていたりしたし。
研修の案内によれば、出願から行使の局面まで一通り網羅するということだったので、この機会に聞いておくとよいだろうとおもって出かけたのだが、残念ながら時間の関係で後半は割愛されてしまい、少々残念。まあ対象が弁理士では出願関係が主になるのは仕方がないし、2時間の短い間であったこともあるのだが、台湾の紹介とかの前置きは省略して本論をみっちりやってほしかったな、という思いは残った。
台湾の知的財産関係法は、特許(発明専利)・実用新案(新型専利)・意匠(設計専利)が一本の『専利法』で、『商標法』が別立て。これは中国大陸法と同じ。でも、台湾の場合、管轄する役所はどちらも知的財産局(TIPO)の中にあるようで、それすら別立てになっている中国大陸とは違っている。
2012年のデータ
発明専利出願件数 51,189件。審査請求率 59.8%。発明専利の平均審査終了期間は46ヶ月(First OA発行まで38ヶ月)。新型専利の方式審査で3.8ヶ月、設計専利が9ヶ月。
2013専利法改正ピックアップ
・審査請求前の自発補正期間の制限(出願から15ヶ月)の撤廃。
・最終(審査意見)通知の新設、補正の制限の導入。
・第三者情報提供制度の新設。
・デザイン(新式様専利→設計専利)において、部分の導入、GUI登録可能へ、連合廃止、関連導入。
・デザインでも『明細書』が必要で、名称・物品の用途・デザインの説明(新規特徴)を記述する。
・国際消尽原則の採用が明文化。
・侵害の差止の要件には故意過失不要だが、損害賠償請求には必要(過失の推定について聞き漏らした)。
・故意侵害の3倍賠償が2013/6/11部分改正で復活
・新型専利の行使時には技術報告書の提示義務が導入(2013/6/11部分改正)
面白かったのは、中国大陸と台湾とで違うのは簡体字と繁体字の文字の違いだけかと思っていたところ、用語自体も結構異なるということだった。特に、特許で用いるような最近の技術用語はそういう傾向が強いようで、コンピュータ関係の用語などはずいぶん違うということで、ほぉ〜と思ったりした。確かに、中国と台湾が分かれてから既にずいぶんな時間が経っているわけで、となると当然ながらその中で採用される用語はその国の状況に左右されるということなのだろう。
この点、ケベック州に居た頃、ケベックで使われているフランス語は大元のフランス本国のフランス語とはずいぶん違ってしまったという話を思い出した。これはどちらかというと、ケベックのフランス語が比較的古い形で温存され、フランス本国の法がどんどん変化している、という文脈だったけれども。
今回のセミナーでは特に取り上げられなかった無効審判だが、台湾の場合、無効審判の閲覧が利害関係人に限られるという制約があり、同じ特許で侵害事件が起っているとなれば閲覧は可能だが、その対応特許が日本で訴訟の対象になっている、程度では認められないようである。(これは個人的覚え)