知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

特許法研究会 2009年2月

本日の発表のお題は、「著作権の侵害成否に関する諸問題」。

著作権侵害が裁判で争われる場合には、大きく分けて4つの争点がある。
 (1)著作物性
 (2)主体→ここで出てくるのが例のカラオケ法理
 (3)権利侵害行為
 (4)抗弁
本日の中心は、(4)ということだったが、ざっと(1)についても触れられていた。

以前、自分で講師をした著作権セミナーでは、侵害判断手順をこんなふうにまとめた。このように、まずは著作物かどうかを判断して、その後に創作的表現が利用されているかを判断する「二段階テスト」が通説だと思われるが、最近の田村善之氏や中山信弘氏は、まず著作物性ありきという風には捉えないようだという紹介があった。

田村先生の「著作権法概説第2版」では、二段階テストに替わる濾過テストとして、

両作品に共通している要素を取り出し、そこが創作的表現か否かを判断する。他の表現方法がいくつもあり得るか、アイデア自体が特殊な個性的なアイデアで独占させても差し支えないものかを検討することになる。

としているそうだ。

また、中山先生の「著作権法」では、創作性について、

創作性概念を思想・感情の流出物としての個性ではなく表現の選択の幅と捉えるべきである。ある作品に著作権を付与しても、なお他の者には創作を行う余地が残されている場合に、創作性があると考えるべきである。

とされているとのこと。

条文に沿って考えれば、まずは著作物性の判断をすることになるのだろうし、創作性は思想感情の表出と捉えるのが素直な読み方だと思う。とはいえ、実際の侵害判断では、創作の幅が重要な判断基準になっていて、著作物性を認めるかどうかと創作的表現が利用されているかどうかとのどちらもが創作の幅に影響される。スローガン等の短い言語の著作物、画面のアイコンのように機能的なもの等のように創作の幅が狭いものでは、著作物性が認められないか、認められる場合は創作的表現の利用とされないか、実質的同一が非常に狭く解されて複製や翻案とされないか、等のような結果になる。とすれば、まず著作物かどうかを一所懸命考えなくても、どちらも合わせて検討することができる濾過テストの方が効率的というか実用的ではないかという判断になってもおかしくはない。

実務家の立場としては、結局同じことを今までもやっているので、それをストレートにしただけではないかという気がする。あとは、条文に沿って組み立てるべきなのかどうなのか、理論付けはどうするのか、という問題では。

#それにしても、中山先生の「著作権法」買っただけで通読できていない。。。ちゃんと読んでおかねば。