知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

California caseでAppleが使った弁護士費用は$60M超らしい

FOSS PATENTS によれば、AppleはSamsungとのカリフォルニア北部地裁での侵害訴訟において、弁護士費用として15百万ドル強を請求した(2013/12/5)とのことである。

FOSS PATENTSでも触れられているように、現在審議中のパテントトロール対策法案では訴訟費用の敗訴者負担が盛り込まれているけれど、現在米国でこれが認められるのは"exceptional"なケースのみで、非常に稀。

で、Appleは、Samsungによる故意侵害が、弁護士費用が認められるための"exceptional"要件を満たすという主張をしているらしい。この$15Mという金額も大した額なのだが、もっと驚くのはこれがAppleが使った弁護士費用合計の3分の1以下だとしていることで、合計は$60Mを超えるとのこと(ちなみにAppleの代理人はMorrison & Foerster LLPで、Samsungの方はQuinn Emmanuelらしい。どっちもレートは高い事務所ではある)。

このケースはそれこそ例外的に巨大な訴訟で金のかけ方も半端じゃないとは思うけど、それにしても$60Mの弁護士費用って(@_@)。しかもカリフォルニアのケースについてのみの話で、ワールドワイドにやってるんだよねぇ。さらにAppleは週1回ペースで提訴されている上、世の中に知れ渡っているが故に半端な和解もできないからどのケースもそれなりのところまで手続を進めて勝訴を取りに行く戦術を採らざるをえないから、どのケースもフルコースに近い費用がかかっていると思われる(さすがに数M$程度だとは思うけど)。いったいAppleの年間特許訴訟予算はどのくらいなんだろうと想像するとクラクラする。

それにしても、このように大きな利益を出している会社であればそれに見合ったlegal feeをかけて争うことも可能になるが、中小規模ではそれはなかなか難しい。賠償額/和解金額は規模にある程度比例して下がるけれど、訴訟費用はそこまで大きく下がらない。どれだけ正しいと思ってもそれを主張して認めてもらうために莫大な費用がかかるのでは、入場制限を受けているのと変わらない。

それで思い出したのだが、少し前のPatentlyOに、最近製造者ではなくその下流のユーザーが特許侵害で訴えられるケースが増えているが、これは下流に行くに従って増える余剰を求めるからだと考えれば経済学的には納得がいく、という記事が載っていた。ここでの問題は、記事の中にも指摘されていたけれど、個々のユーザーは割合としての余剰分は大きいのかもしれないがなにしろ一つ一つの規模が小さくて数が多く、従って、和解金はその余剰を反映したものではなくて訴訟費用を反映したものになり、要するに費用負けするので訴訟経済上和解せざるを得ないということにある。やっぱり、持たざるものは入場制限を受けているってことだよね。ユーザーについては、製造者と違って特許に対する知識を通常持っていないので(必要ないから)、防御の方法がわからないという別の問題もあるし。