知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

ライセンス契約研究会(大阪部会) 終了

昨日は、標記の研究会の最終回だった。この研究会は、弁理士会の自主研修の仕組み(自主的な研究会を立ち上げて弁理士会に届け出ると会場費が無料になる。1年ごとに報告と活動予定の提出が求められる)を利用して、10年ほど前に東京で立ち上がり、大阪でもという声が上がって、2003年4月に開始したもの。

当初は、「判例ライセンス法」から1件を取り上げ、さらに1件を自由に取り上げるという形で二人の発表(輪番)を行い、議論した。判例ライセンス法は、ライセンス分野の判例を網羅的に取り上げた類書のない本で、ライセンス実務をするからにはすべてつぶしておく必要があると考えたものである。

判例ライセンス法―山上和則先生還暦記念論文集

判例ライセンス法―山上和則先生還暦記念論文集

「判例ライセンス法」の輪読?が終了した後、これに代わるテキストを探したが、なかなか適当なものが見つからず、関連する裁判例をとりあげたり、メンバーがかかわっている案件を適宜改変して題材にしたり、その都度行ってきた。

参加メンバーは、大阪の弁理士、弁護士を中心に延べ20人前後だっただろうか。私は大阪設立当初から参加し、その間回り持ちの責任者もやったりして、距離の割にはけっこう積極的に参加してきたと思う。弁理士だけの研究会でなく、弁護士さんの参加が得られたことで、裁判での実際についてリアルな話が聞けたり、法律的な観点から見方を教えてもらえたり、得るところが多かった。議論も盛り上がって非常に有意義な時間を過ごすことができた。

何度かブログにも書いているが、私の最初の仕事はライセンスを中心とした技術法務だった。入社した会社の配属先がたまたま特許部だっただけの単なる偶然だが、それによって職業人生どっぷり知財になったわけだ。弁理士の資格を取り、出願系の業務もしてきたが、やっぱり自分はライセンス屋だと思っているところがある。特許事務所に勤務していた数年の間も、そちら方面の実務感覚を失いたくないという思いが強くあったが、やはりなかなか特許事務所にその手の「周辺業務」のニーズは少なくて、この研究会は自分にとってのよりどころだった。実際、裁判例を読みつつ、第一線の方々から話を聞いて、自分の昔話も合わせて考える、という機会を月に一度持てたことで、今につながっているのではないかと思う。

作春に転職し、企業に戻ったことで、あまり簡単に出張できる身分でなくなってしまい、特に大阪には出づらくなった。メンバーの皆さんも、色々と変化があったり、ますます多方面にご活躍で時間を割けなくなったりして、残念ながらここ1年ほどは集まりが悪くなっていた。今年度終了に当たり、次年度以降の継続について検討したところ、研究会としての使命を終えたということではないだろうか、というのがメンバーの一致した意見となった。

最終回は、M弁護士に、顧問会社で取り扱われている著作権関連の契約問題を題材に取り上げてもらった。ソフトウェアをはじめとするデジタルな著作物はすっかり産業材で著作権の枠組みにあわなくなっていることは、フェア・ユースの論議を持ち出すまでもなく自明なのかもしれない。著作権の消尽とか、著作権法47条の2とか、メディアに固定して販売するものとダウンロード販売とで法的効果は同じ?違う?とか、そこに税法(使用料の源泉税)が絡むとどうなる、とか。面白い点が色々。

話が脱線するが、源泉税絡みで、日米租税条約が新しくなり、使用料は一律免税になったのだが、免税の特典を受けるためにはやっぱり届出書が必要で、契約締結時の面倒さはあまり変わらない。と感じることの多い昨今。昔と違うのは、その届出書を実際作って準備しているのは私じゃなくて若者だというところか。

話を最終回に戻すと、研究会自体は早々に切り上げて、解散会を近畿支部近くのワインディナーで。最終回は、名残を惜しむ人々?で8名が集まり、ディナーとワインに舌鼓をうちつつ、大いに盛り上がった。オフレコ話も盛りだくさんで、参考になる話、与太話?も色々。あっというまに最終の新幹線の時間となった。

研究会はなくなるけれど、人のつながりは終わらない。相談もできるし、同窓会も楽しい。不定期にどこかで研究会を開くのもよし。たまには泊まりでやっても面白そうだ。

このところちょっとへこみ気味だったのだけれど、たくさんパワーをもらいました。ありがとうございました。