本日は弁理士会研修所の会員研修「意匠の類似シンポジウム」だった。
2008年4月から始まった全弁理士対象の義務研修(5年間で70単位)のため、研修の量も質も以前とは様変わりしており、e-Learningも増えて科目数も多くなっている反面、研修所が主催するライブの会員研修は、ライブでしか提供できないような特徴のあるものに絞られつつある。ライブでないと提供しにくい研修の筆頭は、今日のようなパネルディスカッション。以前パネリストで呼ばれた鑑定研修もこれだったし。
研修の形態に加えて、テーマもライブならではのものにしたいという流れがあるらしく、弁理士だれもが関心のある広く浅いテーマよりは、取扱量が少なそうな分野をより深く、という傾向になっている。
そうすると、どうしても実務上差し迫ってその研修が必要な弁理士の総数は減少するので、東京以外では開催しても人数が集まらないという現象が起こる。パネルディスカッション形式で講師を何人も揃えて受講者が寂しいのではお話にならないので、開催地が絞られる格好。
要するに長い前書きで何が言いたかったかというと、前回の鑑定研修はかろうじて名古屋開催があったけれど、今回は東京と大阪のみだったのだ。
しかし、パネリストの豪華な顔ぶれを見たら、これは受講の価値あり!と思って無理矢理東京会場に申込み。大盛況だった。ちなみにパネリストは、
・弁理士 牛木 理一 氏
・弁理士 小谷 悦司 氏
・知財高裁判事 飯村 敏明 氏
・弁護士 牧野 利秋 氏
・弁理士 加藤 恒久 氏
・弁理士 梅澤 修 氏
そして、コーディネーターが弁理士 峯 唯夫 氏。なかなか一堂に会して議論する機会のあるメンバーではない。
よくあるパネルディスカッションでは、パネリストが30分とか1時間とかあらかじめ講義をして、その後それに基づいて1時間くらいディスカッションという形が多いが、今回はそのような形をとらず、ほぼ全時間ディスカッションだった。コーディネーターの峯先生の仕切りが素晴らしいのでこれが可能になったといえましょうか。
メインテーマは意匠の類似についでだが、その前提として、
意匠法の位置づけについて、各パネリストの意見発表(5分ずつ?)
・なぜ意匠を保護するのか
(創作は保護されるべきだから?)、
・意匠の保護と産業の発達との関係
需要を喚起して産業を発達させるために意匠を保護するのか、
創作としての意匠を保護する結果として産業が発達するのか
・美感の位置づけ
(物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合がもたらす視覚的効果?)
その後、それぞれのポイントについてコーディネーターの整理の元にディスカッション。特に加藤先生の立場が、
との考えで、非常に特徴的(というか他の方々と全然違っていて)面白かった。企業の立場からすると、この考え方の方が現場に近くてしっくり来るけど、デザイナーの立場に立つとまた違ってくるのか。意匠法は意匠の創作を保護しているのではなく意匠を保護している。法目的にとっては、保護する意匠が購買心を刺激して経済的発展に寄与することが第一義であり、創作は反射的に保護されるものである。
その後、類似について、判断主体や24条2項についての考え方。具体的判断手法。要部(意匠の特徴部分)の認定方法。要部認定において周知意匠や公知意匠はどのように考慮されるか。さらに、このような判断手法を用いて具体的事例にあてはめるとどのようになるか。それぞれのパネリストがそれぞれの考えに基づいて具体論に言及し議論。コーディネーターの整理と質問、パネリスト同士のやりとりも結構あり、非常に面白かった。
豪華な研修だったが、パネリスト6人はちょっと大過ぎで、もう少し各氏の考え方について深く聞けた方がよかったかな。また、テキストがパネリストごとに冊子になっていて、テーマごとにまとまっていないので非常に見にくかった。あとから読み返すには良いのかもしれないが・・・。
意匠は実は代理人として扱ったことはないし、企業内で担当も直接はやっていない。とはいえ担当から相談されることはよくあるので、やっぱりちゃんと押さえておかないといけないわけだ。特許と同じような感覚でいると思わぬところで転びそうなので、このような機会は逃さずにやっておかないと。さて、この7人分のテキストを読まなくちゃ。